
ビートルズは「解散しても終わらない」。それを世界中に突きつけたのが、1995〜96年の『Anthology 1・2・3』だった。
当時、まだジョージがいた。リンゴとポールだけになった今では、あの瞬間そのものが宝物だったと痛感する。
ジョンのデモ音源が、ビートルズとして蘇えった
「Free as a bird」は衝撃だったし、
「Real Love」はただただ美しかった。
あの2曲があるだけで、Anthology の意味は永遠に消えない。
でも、宝はそれだけじゃない。心ときめくアウトテイクが山ほど眠っていた。
Eight Days A Week──聴かせるコーラスは生音でさらに際立つ
完成形のキャッチーさとは正反対の「迷いの痕跡」。
試行錯誤して、削って削って、名曲が立ち上がっていく感じがゾクゾクする。
Ob-La-Di, Ob-La-Da──テンポもノリも迷走していた
「軽快なスカっぽさ」がなかなか決まらず、ジョンはブチ切れたと言われる曲。
途中でテンポが変だったり、妙にダサかったり、でもそれが人間っぽくて愛おしい。
ポールのしつこさと、バンドのイライラの結晶が、あの能天気ソングになった。皮肉だね。コヨーテはこのアンソロジーバージョンの方が好きです。
And Your Bird Can Sing──笑い転げて演奏する名テイク
名曲が、笑いすぎて成立してない。
ギターはカッコいいのに、途中で全員が爆笑。
こんなに最高のロックが、こんなにふざけて作られてたのかと思うと泣けるし笑える。
「天才たちの遊び場」。それを覗き見している感じ。
Not Guilty──ジョージの「言いたいけど言えない」反撃
ジョージのフラストレーションが染みついた曲。
結局『ホワイトアルバム』から外された。
「俺、軽視されすぎじゃない?」というムードが漂うのに、曲はめちゃカッコいい。
怒る才能も天才級だったということ。
Junk──ポールの素朴な “後に名曲” の胎動
未完成のデモがあまりに美しい。
のちにソロで完成させるけど、ビートルズ時代の “半分の完成” が逆に胸に刺さる。
丁寧に歌えば名曲になる、という予感そのまま。
Come And Get It──ポール、もう全部自分でできるじゃん
実は、これほぼポールのワンマン演奏。
バッドフィンガーに渡すためのデモなのに完成度が高い。
彼が押し付けがましいほど有能だった問題。
Across the Universe──ジョンの声が、むき出しで宇宙へ飛ぶ
『Anthology』版は、余計な装飾が削ぎ落とされているぶん、ジョンの生声がまっすぐ刺さる。
感情を抑えているようで、どこか泣き出しそうな、薄いベール一枚の歌い方。
完成版の華美なアレンジよりも、こちらには淡い痛みと透明さが漂っている。
Anthology が教えてくれたこと
ビートルズは神話じゃない。
天才でもケンカするし、笑うし、迷うし、失敗もする。
その泥だらけの過程が、あの光り輝く楽曲たちを生んだ。
そしていま、
ジョージはもういない。
ジョンはとっくにいない。
リンゴとポールだけが生き証人だ。
だからこそ、あの時の「未完の音楽」が、今ますます尊い。
最後に
ビートルズはもう二度と集まれない。
でも、未完成のまま残った音楽たちが「まだ終わらない」と語り続けてくれる。
それを届けてくれた Anthology は、単なる総集編なんかじゃない。
もう一度、ビートルズに会わせてくれた奇跡の記録だ。

