エルヴィス・コステロ71歳に寄せて〜アルバムで辿る自由自在の軌跡〜

2024年すみだトリフォニーの衝撃


8/25はエルヴィス・コステロの誕生日(age:  71)
昨年、盟友スティーブ・ナイーブとの二人公演に参戦した。アコースティックなアンプラグドかと思いきや、リズムボックスを従えた三人(?)編成。静と動を自在に行き来するセットリストに圧倒され、改めて「この人は枠に収まらない」と実感した。71歳を迎えてなお、攻め続ける姿勢は健在だった。

デビューとニューウェーブの旗手(1977-79)

• 『My Aim Is True』(1977)

 パンクの空気の中で登場したデビュー作。「Alison」で哀愁を、「(The Angels Wanna Wear My) Red Shoes」で毒を効かせた異端の出発点。

• 『This Year’s Model』(1978)

 アトラクションズ加入でサウンドが鋭く研ぎ澄まされる。「Pump It Up」が象徴。

• 『Armed Forces』(1979)

 キャッチーさと反戦メッセージを同居させた代表作。「Oliver’s Army」は今も歌い継がれる。

守備範囲拡大と実験精神(1980-83)

• 『Get Happy!!』(1980)

 R&B/ソウルへのオマージュ。20曲を詰め込んだ濃密な作品。

• 『Almost Blue』(1981)

 カントリー名曲カバー集。賛否両論もあったが挑戦の姿勢がコステロらしい。

• 『Imperial Bedroom』(1982)

 複雑な構成と豪華なアレンジ。成熟したソングライティングの到達点。

• 『Punch the Clock』(1983)

 ポップ寄りながら「Shipbuilding」が際立つ。政治性と叙情の両立。

円熟とアメリカ音楽への傾倒(1984-89)

• 『King of America』(1986、コステロ・ショウ名義)

 アトラクションズを離れ、ルーツ色の強い一枚。エルヴィス・プレスリーを意識したタイトル通り、アメリカ音楽を掘り下げ、素朴で滋味深いサウンドに仕上げた。
 タイトルは皮肉とも挑発とも取れるもので、いま振り返ると後年のトランプ登場を暗示していたようにも思えるのが面白い。

• 『Spike』(1989)

 ポール・マッカートニーとの共作「Veronica」「Pads, Paws and Claws」を収録。メロディと毒の絶妙なブレンド。
ボールとある意味対等の立場で曲が作れるのはコステロくらいだよな。

越境と深化(1990s)

• 『Mighty Like a Rose』(1991)

 シリアスさとポップさを行き来する、奇妙に濃厚な作品。

• 『Painted From Memory』(1998、バート・バカラックとの共作)

 優美で繊細。バカラックの旋律とコステロの声が美しく絡み合う名盤。

2000年代以降:生涯現役

• 『When I Was Cruel』(2002)

 電子音とロックの融合。「When I Was Cruel No.2」は重く不穏な傑作。

• 『The Delivery Man』(2004)

 南部色濃いブルース/ソウル作。ストーリーテラーとしてのコステロが全開。

• 『Hey Clockface』(2020)

 「No Flag」に象徴される怒れるサウンド。70歳目前でこの挑発、衰え知らず。

まとめ


アルバムを軸にたどると、コステロが常に「型破り」であり続けた歴史が浮き彫りになる。

そして何より魅力的なのは、ポップでありながら大衆に迎合せず、現状に満足せず変化し続ける姿勢。円熟を迎えても、コステロの心の芯は燃え続け、メッセージを発し続けている。
そんな彼の生き方は、コヨーテもまた目指すところだ。

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