
イーグルスは仲が悪かった、という話だけで語るにはもったいない。
11/6はグレン・フライの誕生日。
イーグルスの中で「明るい方」という印象を持たれがちだ。
「Take It Easy」を歌っていたから、そう思われるのもわかる。
楽天的で軽やかで、太陽と乾いた風が通り抜ける声。
でも、実際はそんなに単純な役割分担じゃない。
曲のクレジットを見ると、グレンとドン・ヘンリーの共作が多い。
あのバンドは2人の距離感と、空気の揺れで動いていた。
もちろん、イーグルスにはドロドロした話がある。
バーニーが抜けたとき、ランディが辞めたとき、
「共謀した」とか「追い出した」とか、いろんな噂が飛び交った。
仲が悪かったとも言われる。
深い信頼があったとも言われる。
どっちも本当なんだと思う。
これは長く一緒にいた人間関係の話だ。
簡単な言葉にして切り分けられるものじゃない。
最後は再結成して
年を重ねた声で、同じステージに立っていた。
それで十分じゃないか、と思う。
イーグルスは「明るいバンド」で始まった
「Take It Easy」から始まるイーグルスは、最初は牧歌的で、のびのびしていた。
だけど、キャリアが進むにつれ曲は人間の影や疲れ、不安、心の皺みたいなものに近づいていく。
「The Long Run」で少し切なく終わる感じは、まさにその象徴だ。
グレンの声には「前へ歩かせる力」があった。
ヘンリーの声には「立ち止まって考えさせる力」があった。
この2人の温度差こそが、イーグルスの核であり、矛盾であり、魅力だった。
グレンとヘンリー、その距離感
グレンは前に立つタイプ。
ヘンリーは内側で燃えるタイプ。
相性の良さでもあり、衝突の原因にもなるペアだ。
だけど不思議なことに、どんなにバランスが崩れても
曲だけはちゃんと「イーグルスの音」として成立していた。
これはもう理屈じゃない。
声と声、意地と意地、尊敬と嫉妬が混ざったものだ。
そして、そういう複雑な関係からしか生まれない音がある。
グレンのボーカルで聴きたい曲
ここは思い入れ重視で5曲。
「Take It Easy」
イーグルスがはじまる場所。
軽さに救いがある曲。
「Peaceful Easy Feeling」
風が通っていくみたいな歌。
優しいんだけど、少しだけ寂しい。
「Lyin’ Eyes」
柔らかい声で、刺さる内容を歌う。
こういう残酷さを穏やかに運べるのがグレンの特性。
「New Kid in Town」
コヨーテが一番好きな曲。
「いつか誰かに代わられてしまう」
こんな残酷な真理を、あんな優しい声で歌う。
美しさと苦さと人間の温度。
年を取るほど沁みる。
「The Heat Is On」(ソロ)
明るさをそのまま前へ出した曲。
時代感はあるのに、古びない推進力。
まとめ
イーグルスは確かに面倒なバンドだ。
関係がこじれたり、離れたり、戻ったり、また気まずくなったり。
でも、それは「ちゃんと本気で一緒にいた」という証拠だと思う。
グレン・フライはイーグルスの「太陽」だったというより、
「このバンドが前へ歩くための足」だった気がする。
グレンが亡くなった時、ドン・ヘンリーら、存命中のメンバーは「Take It Easy」を演奏し、追悼パフォーマンスを行っている。
「あれは最後のお別れだったんだ。僕はもう一度パフォーマンスを観られるとは思わないね。多分、あれが最後だよ。あれが真っ当なお別れだったんだよ」
なんて言いながらグレンの息子が入って再び活動を始めたり、そこがイーグルスらしいところ。
