ジュリアン・カサブランカス(The Strokes)の魅力って、結局どこ?

8月23日、ロックンロール・リバイバルの顔に寄せて


1978年8月23日生まれ、47歳。The Strokesのジュリアン・カサブランカス。正直、私は5年前までほぼスルーしていた。気づいた時は、活動も半休止っぽくて、「なんでもっと早く聴かなかったんだ」と少し悔やんだ。

それでも「どこがそんなに良いの?」と聞かれると、うまく説明できない。メロディーはシンプル、声は独特、演奏は抑制的──なのに、気づけば感情がじわっと上がっている。デビュー作『Is This It』も、その後のアルバムも、全部「なんかいい」。でも言語化すると逃げていく。

そんなモヤモヤに答えのヒントをくれたのが、ぴよぴよさんのnote(ありがとうございます)。
狙っているのに、気負ってない。無機質でクール、おしゃれなのに、ちゃんとロック。そう、肩の力の抜け方が絶妙なんだ。

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The Strokes おすすめアルバム3選

• 『Is This It』 (2001)

すべての始まり。ニューヨークの地下から世界をひっくり返したデビュー作。代表曲「Last Nite」「Someday」に象徴されるように、最小限のアレンジで、抑制と熱のバランスを両立させた。無駄を削ぎ落とした“引き算の美学”を最も感じられる一枚。

• 『Room on Fire』 (2003)

音はさらに研ぎ澄まされ、冷たい刃物のようなカッティングとリフが光る。特に「Reptilia」はタイトなリズムと冷徹なギターが絡み合い、制御された衝動を体現。前作の勢いを保ちながらも、よりストイックな方向に進んだ。

• 『First Impressions of Earth』 (2006)

バンドとしての広がりを求めた挑戦作。音は厚くなり、スケール感も増した。それでもジュリアンの気怠くクールな声が全体を貫いている。デビュー期のシンプルさとは対照的に、進化したThe Strokesを味わえる。

そして現在も


長いブランクを経て発表された 『The New Abnormal』 (2020) は、サウンド的にはより落ち着いた仕上がり。それでも「大人になったStrokes」というより、相変わらず肩の力を抜いたまま、時代にすっと馴染む音を鳴らしている。過去の遺産に頼らず、自然体で続いていること自体が、もう彼ららしい。



要するに、The Strokesは**“引き算の美学”でロックを更新した**。構成を削り、音色を絞り、感情を煮詰める。でもクールを保つ。狙っているのに、力んでない。無機質なのに、体温がある。説明しようとするとスルッと逃げるけど、耳はちゃんと覚えている。

47歳のジュリアン。いま出している音は多くなくても、2000年代以降のロックが何でカッコよくあり得たのか、その基準を作った人の一人なのは間違いない。結局のところ──説明不能の“ちょうど良さ”が、最高にロックって話。