
TOTOを支えたギター番長
10月21日は、TOTOのギタリストにしてセッション界のレジェンド、スティーヴ・ルカサー(Steve Lukather)の誕生日。
以前ドラムのジェフ・ポーカロを紹介したが、僕がTOTOを“産業ロックの奇跡”として愛してやまない理由は、この二人の存在に尽きる。
ルカサーのギターは派手でも、早弾きでもない。
でも**「一音で空気を変える」**。
今日はそのルカサー節が堪能できる6曲を、TOTO時代とセッションワークから選んでみた。
TOTO編:黄金の3曲
① Hold the Line(TOTO/1978)
TOTOデビュー作にして、いきなりロック史に刻まれた。
ギターとピアノのユニゾン、太いリフ、押し出しの強いサウンド。
この曲を聴けば、“産業ロック”なんて呼び名じゃ片づけられない熱量が伝わってくる。
② Rosanna(TOTO IV/1982)
ポーカロの伝説的“ハーフタイム・シャッフル”に、ルカサーのカッティングが絡む。
ソロはメロディアスで、完璧に構築されていながら感情的。
この1曲で、TOTOはAORとロックの境界線を消した。
③ I Won’t Hold You Back(TOTO IV/1982)
ルカサー自身が歌い、ギターも泣く。
速弾きの代わりに情感で勝負するバラード。
静けさの中でギターが“語る”——
それがスティーヴ・ルカサーの真骨頂だ。
セッションワーク編:世界を動かした3曲
④ Physical(Olivia Newton-John/1981)
一見シンセ主体のポップソングだが、裏でグルーヴを支えているのはルカサーのギター。
軽やかなカッティングと絶妙なバランス感覚。
LAサウンドの明るさと都会的な色気が同居している。
⑤ Beat It(Michael Jackson/Thriller/1982)
エディ・ヴァン・ヘイレンのソロが話題だが、リズム隊を担当したのはルカサー。
ギター、ベース、シンセまでも彼の手による。
ポップとロックの融合を本気で成功させた裏の主役。
⑥ Turn Your Love Around(George Benson/1981)
AOR史に残る名曲。
ベンソンの甘いボーカルを、ルカサーが控えめなリフで引き立てる。
一音で曲全体を締めるこのセンスこそ、プロ中のプロ。
あとがき
TOTOでは情熱をぶつけ、
セッションでは他人の光を際立たせる。
どちらもスティーヴ・ルカサーそのものだ。
派手なギターより、誠実な音。
技巧より、音楽を愛する姿勢。
彼のギターには、80年代LAの風と職人の魂が同居している。
そしてその風はいまも──
Rosannaのリズムと共に、Beat Itのグルーヴの中で鳴り続けている。
 
  
  
  
  

