ドナルド・フェイゲンを聴いて、大人になった気がした

1月10日は ドナルド・フェイゲン の誕生日。

はじめて『ナイト・フライ』を聴いたとき、
「あ、これは子ども向けじゃないな」と思った。

ロックに夢中だった頃の“かっこよさ”とは違う。
ジャケットからして夜。都会。しかも煙草とウイスキーの匂いがする。音は洗練されているのに、軽くない。
「おしゃれ」という言葉で片づけるには、あまりに芯が太い。
皮肉、知性、諦観、そして少しのユーモア。
フェイゲンの声は、人生の綺麗ごとを信用していない。

スティーリー・ダン は
ウォルター・ベッカー との二枚看板。
この時点でダサくなりようがない。

ジャジーで完璧主義な後期が評価されがちだけど、
ロックの匂いがまだ濃かった初期・中期にも、どうしようもなく良い曲がある。

というわけで、
初期・中期/Aja/Gaucho/ソロ/後期から、それぞれ2曲ずつ。

初期・中期スティーリー・ダン(ロックの血が濃い)

1. Do It Again(『Can’t Buy A Thrill』)

ラテンのリズム、怪しげなシンセ。
まだ「売れる気」も「ロックの匂い」も残っている名曲。

2. My Old School(『Countdown to Ecstasy』)

軽快だけど皮肉たっぷり。
フェイゲンの“ひねくれポップ”が最初に完成した瞬間。

『Aja』期(完璧主義の頂点)

3. Aja

説明不要。
ジャズ、ロック、フュージョンの境界線を消した一曲。
この音圧、この透明感、今聴いても異常。

4. Deacon Blues

負け犬の美学。
フェイゲンが歌うと、敗北が少しだけ誇らしく聞こえる。

『Gaucho』期(冷たさと諦観)

5. Babylon Sisters

都会の朝。
完璧すぎて、逆に不安になるグルーヴ。

6. Hey Nineteen

世代ギャップと孤独。
笑えないのに、どこか可笑しい。フェイゲン節の完成形。

ソロ:ドナルド・フェイゲン(夜の語り部)

7. I.G.Y.(『The Nightfly』)

未来は明るいはずだった、という皮肉。
ポップなのに、聴後感は切ない。

8. The Nightfly

このアルバムの核心。
夜のラジオ、孤独、知性。全部ここにある。

後期スティーリー・ダン(老獪という名の進化)

9.Cousin Dupree(『Two Against Nature』)

最低な歌詞。最高の演奏。
「大人になりすぎたロック」の到達点。

10. Things I Miss the Most(『Everything Must Go』)

もう取り戻せない時間。
フェイゲンが歳を重ねたからこそ書けた名曲。

サポートメンバーという“化け物たち”


スティーリー・ダンを語るなら、演奏陣は外せない。
• スティーヴ・ガッド(Ajaのドラムは事件)
• チャック・レイニー(ベースの教科書)
• ラリー・カールトン(ギターの色気担当)
• マイケル・マクドナルド(あのコーラスの正体)

彼らを「雇って」「使い倒す」フェイゲン&ベッカーもまた怪物。

まとめ:フェイゲンは“大人向け”ではない


ドナルド・フェイゲンは
「大人向け音楽」じゃない。

大人になってしまった人間にしか刺さらない音楽だ。

若い頃に聴いてピンとこなかったなら、正解。
ある日ふと、夜にウイスキーを飲みながら再生してみてほしい。

そのとき、たぶん思う。

——ああ、戻れないところまで来たな、と。

でもそれ、悪くない。