
8月16日は、ジャズ・ピアニスト ビル・エヴァンス(1929-1980) の誕生日。
コヨーテにとっても大好きなピアニストの一人です。
彼のピアノは、とにかく繊細。クラシックのドビュッシーやラヴェルの香りをまといながら、ジャズの即興に溶け込んでいく。音の粒や和音の重なりが透明で、「ジャズってこんなに美しく響くんだ」と感じさせてくれた人でもあります。
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エヴァンスの歩んだ道
ニュージャージー州で生まれ、クラシックを学んだのちジャズへ。
1958年、マイルス・デイヴィスの名盤『カインド・オブ・ブルー』に参加し注目の存在に。あの静謐なコードの響きは、まさにエヴァンスの仕業です。
その後は、自身のトリオ(スコット・ラファロ、ポール・モチアンとの黄金トリオ)で、ピアノ・トリオを“会話する音楽”へと進化させました。
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神格化の裏にある「人間エヴァンス」
詩的で完璧な演奏から「孤高の天才」とされる一方、私生活は波乱続き。
薬物依存、愛する人との別れ、家族の悲劇…。その苦悩は音に深い陰影を与え、聴く人には胸を打つ美しさとして伝わります。
エヴァンスは「弱さも含めて音に刻んだ人」。だからこそ彼のピアノは、ただの美しさを超えて人間味を帯びるのです。
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おすすめアルバム4枚(+必聴曲)
1. Waltz for Debby(1961)
ニューヨーク「ヴィレッジ・ヴァンガード」での名ライブ。観客の息づかいまで閉じ込められた空気感が魅力。
• 聴きどころ:「Waltz for Debby」、「My Foolish Heart」
2. Sunday at the Village Vanguard(1961)
同日の昼に収録された姉妹盤。ラファロのベースが主役級に歌い、三者の会話が鮮やか。
• 聴きどころ:「Gloria’s Step」、「Alice in Wonderland」
3. Explorations(1961)
スタジオ録音ながら張りつめた緊張感。エヴァンスらしい響きの妙が詰まっています。
• 聴きどころ:「Nardis」、「Elsa」
4. You Must Believe in Spring(1981)
死の前年に残した傑作。成熟した音に人生の儚さが滲みます。
• 聴きどころ:「We Will Meet Again」、「B Minor Waltz」
共演で光る名演奏
アルバム以外にも、他の巨匠と残した名演は必聴。
• 「Blue in Green」(マイルス・デイヴィス『Kind of Blue』)
作曲はエヴァンスだとも言われる、深遠で透明な一曲。
• 「My Funny Valentine」(トニー・ベネットとの共演盤より)
ボーカルとピアノが寄り添う名唱。エヴァンスの伴奏の妙が光ります。
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まとめ
ビル・エヴァンスの音楽は、美しさと同時に人間の弱さや影までも映し出しています。
「神格化された天才」ではなく、苦悩を抱えながら音楽に全てを注ぎ込んだひとりの人間。だから彼のピアノは聴くたびに心にしみるのだと思います。
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👉 コヨーテ的には、夜にワイン片手で 「Peace Piece」 を流すのが最高の贅沢。
ただし飲みすぎると途中で寝落ちするので要注意…(笑)。