マイケル・ジャクソン ― 永遠のポップ王と、その影

8月29日はマイケル・ジャクソン(1958-2009)の誕生日。
「キング・オブ・ポップ」と称されながら、いつまでも少年の佇まいを残したままこの世を去りました。私より年下だったことに、あらためて時の流れを感じます。

圧倒的な才能と輝き


マイケルの魅力はまず、圧倒的な才能に尽きます。歌唱、作曲、ステージ演出、そして唯一無二のダンス。ムーンウォークは「人間は重力から自由になれる」と信じさせてしまう魔法でした。

① 「I Want You Back」

ジャクソン5時代の代表曲。まだ少年の声なのに、リズム感と表現力はすでに天才の域。ポップ史に衝撃を与えた鮮烈なデビュー作です。

② 「Don’t Stop ’Til You Get Enough」

アルバム『Off The Wall』から。軽快で明るいリズムは、マイケルがまだ“希望に満ちていた時代”を象徴しています。

変わりゆく顔と心


80年代以降、彼の外見は大きく変わっていきます。皮膚の色が徐々に白くなり、顔の輪郭も次第に変化。皮膚病(尋常性白斑)の影響もありましたが、それ以上に「なぜ彼は自分をここまで変え続けたのか」という問いは、世界中で囁かれました。
それは、内面の孤独や自己否定の投影だったのかもしれません。

ビートルズとの因縁


80年代、マイケルはビートルズの楽曲著作権をめぐり音楽出版社を買収。結果的に、かつてデュエットまで果たしたポール・マッカートニーと関係が悪化しました。
「友情とビジネスは別物」という冷徹さを見せた一件は、マイケルの複雑な生き様を象徴しています。

③ 「The Girl Is Mine」

アルバム『Thriller』収録、ポールとのデュエット曲。仲睦まじい二人の歌声を聴くと、その後の確執がより切なく響きます。

孤独な最期


2009年、復活コンサートを目前にした急逝。華やかな表舞台の裏側では、強い薬に頼らざるを得ないほど追い込まれた生活がありました。
「永遠のポップ王」の最後は、あまりにも孤独で寂しいものでした。

④ 「Man in the Mirror」

自分自身と向き合い、「世界を変えるには自分が変わらなければ」と歌った名曲。彼の内面の痛みと祈りがストレートに刻まれています。

⑤ 「Heal The World」

世界を癒したいと願った一曲。けれど実際には、自分自身を癒すことが一番難しかったのかもしれません。

おわりに


私は『Off The Wall』を特に愛しています。後年のマイケルは「売れすぎたスター」という距離感から敬遠してしまったけれど、振り返ればその歩みは光と影の両極が同居する壮大なドラマでした。

才能と孤独を天秤にかけたら、才能が勝ちすぎて彼自身を壊してしまった人。

それでも、マイケルが残した音楽とパフォーマンスは、これからも世界中の人々を魅了し続けるはずです。