12月5日はウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの命日。
クラシックにあまり詳しくない人ほど「神童で天才、曲が泉のように湧き出て、みんなに愛された幸福な作曲家」というイメージを持ちがちだと思う。
コヨーテも昔はそうだった。「なんか色々順調で、あっけなく亡くなった人」みたいなイメージ。でも、実際のモーツァルト像はまったく違う。むしろその逆。「天才ゆえに苦しんだ人生」そのものだった。
以下では、よくある勘違いをサラッと解きほぐし、最後にコヨーテが好きなモーツァルトのピアノ作品を中心に、 おすすめ盤ベスト5 を紹介する。
「幸せな神童」なんてどこにもいなかった
まず、事実だけ羅列するとこうなる。
・子ども時代は天才ではあるが、ほぼ「興行ツアー漬け」
宮廷の可愛い神童、ではなく、父レオポルトが欧州各地を回って少年モーツァルトを披露する「長期営業ツアー」。当時の移動は命がけ。病気にもたびたびかかり、子どもにとっては過酷そのもの。
・ウィーンではずっと「フリーランス」
現代で言えば音大卒の超天才が「会社員(宮廷楽師)」になれず、フリーでレッスンしながら作曲して生活費を稼ぐ状態。しかも景気は悪い。レッスンも途切れがちで収入不安定。
・パトロンとの関係は複雑
サリエリ云々は都市伝説寄りだが、保守的な宮廷社会ではモーツァルトの奔放さは敬遠された。「才能は認めるが扱いづらい」。現代でもいるタイプの天才よね。
・実際はお金の苦労がとても多い
あの生活ぶりと収入のムラが重なれば、そりゃ苦しい。晩年の手紙は金策の話だらけ。「天才=金持ち」なんてどこにもない。
・「楽な人生」「みんなに愛された天才像」は死後に作られたもの
死後しばらくしてからロマン派の時代に「純粋な天才の悲劇」イメージが強調され、さらに20世紀の映画や本で定着した。
つまり、モーツァルトは「苦労のない天才」どころか
才能ゆえに誤解され、時代の壁にぶつかり続けた人。
そのギラギラした生々しさが、あの音楽の輝きにつながっている。
じゃあ、音楽はどうなのよ?
ここからコヨーテらしく、ピアノ作品中心に紹介したい。
モーツァルトのピアノ曲は、派手さより「音と音の間の美しさ」を聴く音楽。
そして、録音によって印象がまるで変わる。
というわけで、いま聴き直すならコレ、という ベスト5 を出す。
コヨーテが選ぶ「モーツァルト おすすめ盤」ベスト5
1位:内田光子
「ピアノ・ソナタ全集」「協奏曲シリーズ」
モーツァルトのピアノを語るなら、もうこれは外せない。
澄み切っているのに冷たくない。テンポの揺れが自然で、まるで語りかけるような音。
特にソナタK.330の第2楽章は「ため息の美学」そのもの。
2位:New York Classical Players(ニューヨーク・クラシカル・プレイヤーズ)
「Divertimento K.136–138(小編成室内オケ版)」
ピアノ以外で大好きなのはこれ。
アメリカ発の室内オケらしく、
クリアでスピード感のある、風通しの良いモーツァルト。
K.136 第1楽章の入りだけで世界が一気に明るくなる。爽快なのに雑味ゼロ
という“室内楽モーツァルトの理想形”。
ヨーロッパ勢の「品」ではなく、
透明でストレートな“アメリカの光” を浴びたK.136。
ディヴェルティメントを1枚選ぶならこれで文句ない。
3位:マリア・ジョアオ・ピリス
「ピアノ・ソナタ集」
ピリスは「弱音の魔術師」。
丁寧に時間を止めてくるタイプで、夜中に聴くと最高。
K.457の厳しめのソナタが、逆にピリスの繊細さで凄みを増す。
4位:フリードリヒ・グルダ
「初期ソナタ集」「協奏曲」
自由奔放で、いちいちグルダ。
クラシックらしさから一歩抜けて、ジャズの影が見える瞬間がある。
でもモーツァルトの芯は外さない。K.576あたりが生き生きしてて気持ち良い。
5位:マレイ・ペライア
「ピアノ協奏曲 No.21, 23」
透明度が高く、甘すぎないロマン。
協奏曲21番K.467は「もうこれでいいじゃん」という完成度。
ピアノがキラキラしていて、ウィーンの空気がそこにある。
まとめ:神童の裏にある「人間モーツァルト」の顔
モーツァルトは「天才の象徴」のように扱われるけれど、実は
「天才が社会に適応しきれず、それでも音楽に命を燃やした人」。
そんな等身大の姿で見ると、ピアノ作品の輝きがよりリアルに響いてくる。
そして、12月5日に聴くなら、やっぱりピアノ。
派手じゃないけど、心の真ん中を照らしてくれる。
コヨーテも、今年の12/5は「K.330」「協奏曲21番」あたりを静かに流すつもり。
酒は……モーツァルトは白ワインが似合うけど、日本酒でもいいね。
淡くて、香りが控えめなやつ。
