ラヴェルの理性に潜む狂気

12/28は モーリス・ラヴェル の命日。
コヨーテにとっては、迷いなく「一番好きな作曲家の一人」と言える存在だ。

洋楽・ロック好きにラヴェル好きが多いのも、たぶん必然。
この人の音楽、感情より先に「構造」で殴ってくる。

反復は正義──「ボレロ」


「ボレロ」は、説明不要の中毒曲。

あのリフ、あのリズム。
やってることはほぼ同じなのに、止まらない。
音量と楽器だけを少しずつ足して、気づいたら逃げ場なし。

展開? しない。
転調? しない。
でも、ちゃんと盛り上がる。

これ、完全にロックのリフ地獄と同じ発想。
ラヴェルは「どうすれば人は高揚するか」を、感覚じゃなく理屈で知っていた人だ。

優雅に壊れていく──「ラ・ヴァルス」


「ラ・ヴァルス」は、さらにヤバい。

最初はちゃんとワルツ。
でも、どこか足元が不安定。
聴いているうちに、きれいな舞踏会が崩壊していく。

美しいのに、怖い。
秩序があるのに、制御不能。

第一次大戦後の世界、なんて読み方もできるけど、
それ以上に「人間の内側が壊れる瞬間」を音にした感じがする。

甘くない。
だから何度も聴きたくなる。

静けさの暴力──「亡き王女のためのパヴァーヌ」


ここで一気に温度が下がる。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、とにかく静か。
泣かせにこない。盛り上げない。
ただ、きれい。

音が少ないから、余白が生きる。
聴く側の記憶や感情が、勝手に入り込んでくる。

ラヴェルは、
派手に盛ることも、徹底的に削ることも、両方できる。

これが強い。

管弦楽の魔術師? いや、冷酷な職人


ラヴェルといえば「管弦楽の魔術師」。

確かにその通り。
楽器の色、配置、鳴らし方。
全部計算済みで、無駄がない。

でも、忘れちゃいけないのがピアノ曲。

「水の戯れ」
「夜のガスパール」

特に「夜のガスパール」。
これはもう、優雅じゃない。容赦もない。

技巧のための技巧じゃなく、
「ここまで弾けるなら弾いてみろ」という冷たい視線を感じる。
美しいけど、安心はさせてくれない。

栄光のあとに残ったもの


ラヴェルの人生、後半はしんどい。

脳の病で、言葉も音楽も奪われていく。
頭の中には音楽が鳴っているのに、外に出せない。

映画 ボレロ 永遠の旋律 が描いたのも、
成功より、そのどうしようもない苦悩だった。

理性で音楽を組み上げてきた人間が、
その理性を失っていく。
皮肉がきつすぎる。

コヨーテ的・まとめ


ラヴェルは、
熱血でもなく、感傷的でもなく、
ひたすら冷静で、官能的で、ちょっと孤独。

だからロック好きに刺さる。
構造フェチ、反復中毒、崩壊美学が好きな人には、ど真ん中。

12月28日。
今日は派手な音はいらない。

ラヴェルを、小さめの音で流す。
それだけで、十分に深い夜になる。