ローラ・ニーロ──魂で書き、心で歌った短命の歌姫

こんにちは、コヨーテです。
10月18日は、ローラ・ニーロの誕生日(1947–1997)。
わたしが彼女を知ったのはずいぶん遅く、山下達郎さんのラジオで流れた「Wedding Bell Blues」がきっかけでした。
あの独特の節回しと、ちょっと翳りを帯びた声。気づけば、胸の奥にずっと残っている。そんなタイプのシンガーソングライターです。

■ 魂のメロディーメーカー

ニューヨーク・ブロンクス出身。
ソウル、ゴスペル、ポップス、ジャズまでを飲み込んだ天才的な作曲センスで、十代から曲を書き始めたローラ。
彼女の作品は他のアーティストに次々とカバーされました。
フィフス・ディメンションの「Stoned Soul Picnic」、ブラッド・スウェット&ティアーズの「And When I Die」、スリー・ドッグ・ナイトの「Eli’s Comin’」。
いずれも彼女のペンによるものです。本人の歌よりヒットしてしまったのが、なんともローラらしい。

■ おすすめアルバム&楽曲

1️⃣ Eli and the Thirteenth Confession(1968)

ローラ・ニーロという名前を知らない人でも、このアルバムを聴けば一発で虜になるはず。
名曲「Eli’s Comin’」や「Stoned Soul Picnic」は、まるで魂の波動。
教会の聖歌のようでいて、街角のソウルクラブの熱気もある。
それでいて「Sweet Blindness」のような軽やかで洒落たナンバーもあり、まさに彼女の多面性を体現しています。
愛と信仰、歓喜と孤独──人生のすべてが1枚に詰め込まれた傑作です。

2️⃣ New York Tendaberry(1969)

一転して、こちらは深夜のピアノアルバム。
彼女のピアノがまるで心臓の鼓動のように響き、低く囁くような歌が闇に溶けていきます。
「Save the Country」は、当時の混沌としたアメリカ社会を背景に“希望を取り戻そう”と歌い上げた祈りのような曲。
一人の女性が時代と真っ向から向き合った叫びでもあります。
山下達郎さんも「このアルバムは真夜中のニューヨークそのもの」と評していましたが、まさにその通り。

3️⃣ Gonna Take a Miracle(1971)

ローラが敬愛する60年代ソウルナンバーを、フィリー・ソウルの重鎮ギャンブル&ハフのプロデュースでカバー。
バックにはパティ・ラベル率いるレーベル・メイトがコーラスで参加。
彼女のオリジナルとは違い、ここでは“黒人音楽のルーツに抱かれている白人女性”という独特の立ち位置が光ります。
特に「The Bells」や「It’s Gonna Take a Miracle」など、声の温度と感情の震えが見事。
ローラが心から楽しんで歌っているのが伝わってきます。

■ 影響を与えたアーティストたち

ジョニ・ミッチェル、キャロル・キング、エルトン・ジョン、スティーヴィー・ニックス……
皆が口を揃えて「ローラ・ニーロがいなければ、今の自分はいなかった」と語ります。
彼女が開いた“感情の自由”は、後続の女性シンガーソングライターたちに確実に受け継がれました。

■ 早すぎた別れ、けれど音は生き続ける

49歳で卵巣がんにより逝去。
活動期間は短かったものの、彼女の残した音楽は今も多くのアーティストにカバーされ続けています。
Spotifyで聴き返すと、どの曲もまったく古びない。
むしろ、デジタル時代の“冷たい音”に慣れた耳には、その人間らしさが沁みるほどです。

■ コヨーテのひとこと

ローラ・ニーロを聴くと、音楽って“正しさ”より“誠実さ”なんだと感じます。
上手に歌うより、心をさらけ出す勇気。
それこそが彼女の遺した最大のメッセージだと思います。

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