小田和正 78歳の誕生日に寄せて〜解散と再会、そしてあの声は今も〜

青春はオフコースとともに


9月20日、小田和正78歳。もう80目前とは思えない。
コヨーテの青春は、かなりの部分オフコースで彩られていた。同級生5人でバンドを組んでギターをかき鳴らし、「Yes-No」をコピーしては、区役所の貸しスタジオに響くコーラスのハモりにニヤついた。うまい下手じゃない。あの声が鳴るだけで、季節が動いた。

アルバム4枚でたどる黄金期


コヨーテにとってのオフコースは、鈴木康博がいた頃まで。
『FAIRWAY』『Three and Two』『We are』『over』──この4枚が、進化と美しさの軌跡だ。

• FAIRWAY:ソフトでメロウ、でも芯は強い。

「あなたのすべて」「夏の終り」の流れは、甘さとほろ苦さが同居する黄金比。ここで“都会のオフコース”が輪郭を得た。  

• Three and Two:アコースティックとロックっぽさが絶妙に昇華された傑作。

「思いのままに」「愛を止めないで」の緊張と解放。のちの大ヒットの“設計図”がここにある。  

• We are:ポップの最高点。

1音目から世界が開ける「Yes-No」。アルバムを通すと、呼吸が浅くなる完成度。  

• over:余韻の美学。

冒頭の「心はなれて(Instrumental)」で静かに幕を開け、「言葉にできない」で胸の内だけが騒ぐ。静かな名盤とは、こういうやつ。  

解散コンサートの現場感


解散コンサートのチケット発売日は販売場所が当日までシークレット。大阪・梅田で張り込み、御堂会館と聞いた瞬間に地下鉄へダッシュ──手に入れた紙切れはいまでも宝物。
泣かせに来ない淡々とした演奏なのに、なぜか涙は勝手に出る。不思議だが、ライブの魔法ってだいたいそういうもの。

解散の必然


理由は“音楽性の違い”の一言に尽きない。曲の強度が高すぎて、1枚の中で綱引きになっていく──そんな張り詰めた空気が録音・現場の端々に滲む。最後のツアーはケジメと感謝の儀式。もう十分、伝わった。

“再結成”はやっぱりないな


2017年11月23日のNHK-FM『今日は一日“小田和正”三昧』で、小田和正と鈴木康博が“35年ぶりに共演”(放送上の共演)し、全国のファンがどよめいたのは本当。これが“いよいよ来るか?”の熱を一段上げた。結論? 来そうで来ない。それでも、期待はやめられない。  

メンバーの今


鈴木康博はギターを抱えてステージに立ち続け、清水仁も歌い続けている。
小田は78歳になってもステージを駆け、あの透明な声を保ったまま。“反則級”という言葉はこの人のためにある。



秋の気配はまだ遠い。けれど、この4枚はいつでもコヨーテの中で鳴り続けている。
今夜は『over』のラストに浸りながら、御堂会館まで走った自分を、少しだけ誇らしく思ってやろう。YesかNoか? Yesだ。

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