マイルス・デイビス ― 革新し続けたJazzの帝王

マイルスの凄みは「変化」だった


9/28はマイルス・デイビスの誕生日(1926-1991)。言わずと知れた「ジャズの帝王」だが、単なる巨匠ではない。
彼が常に求め続けたのは、音楽の革新。1940年代のビバップから、クール・ジャズ、モード・ジャズ、エレクトリック期、さらにはヒップホップ世代との共演まで──とにかく止まらない。
私が距離を置きたくなるジャズは、自己満足的で、同じフレーズを回し合ってるだけのインタープレイ。マイルスはそこを真っ先に壊して、常に次のステージへ行く。その姿勢はまさにロック的。

マイルスが与えた影響とフォロワーたち


マイルスのバンドからは、後にジャズ界を支配するモンスターが次々と巣立っていった。
ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、チック・コリア、ジョン・マクラフリン…。
彼らがリーダー作を作り、70年代のジャズロックやフュージョンを開拓していった。
さらにロック界にも影響は波及。グレイトフル・デッド、サンタナ、プリンス、レディオヘッドまでもが、マイルスの実験精神に影響を公言している。

Rock好きにすすめたいマイルスのアルバム5選

Kind of Blue(1959)


モード・ジャズの金字塔。たった二日で録音されたにもかかわらず、全曲が名曲。深夜に聴くと危険なほどクールで都会的なアルバムだ。
おすすめはオープニング曲 「So What」。たった二音のテーマから始まるシンプルさと、漂うクールさがマイルスの美学を象徴している。

Miles Smiles(1967)


第二黄金期クインテットの真骨頂。自由なのにタイト、バンド全員が互いを挑発し合うようなインタープレイ。背筋が伸びる緊張感とスリルがある。
特に 「Freedom Jazz Dance」 は、このメンバーの恐ろしいほどの一体感とスリルが体感できる名演。

In a Silent Way(1969)


ロック好きにとって一番入りやすいアルバム。チック・コリアやジョン・マクラフリンと作り上げた静謐なジャズ・ロックで、長尺なのに不思議と飽きない。夜のドライブに最高。
おすすめはタイトル曲 「In a Silent Way / It’s About That Time」。静かな導入から、じわじわとビートが立ち上がる瞬間がたまらない。

Bitches Brew(1970)


ジャズとロックの融合を爆発させた問題作。1曲が20分超えるが、退屈どころかトランス状態に。ジャズの殻をぶち破った瞬間を体感できる。
まずは表題曲 「Bitches Brew」 から。混沌とした音の海に放り込まれ、気がつくと抜け出せなくなる。

Doo-Bop(1992)

遺作にしてヒップホップとのコラボ。死の直前まで新しい音楽と格闘していたマイルスの姿勢が刻まれている。90年代以降のジャズに繋がる“次の一手”を感じる1枚。
おすすめは 「Mystery」。ヒップホップのビートの上で、マイルスが淡々と吹き続けるクールさが光る。

コヨーテの締め


マイルスは革新するたびに「裏切り者」と言われたが、意に介さず前へ進んだ。
音楽に「安住」はない、という姿勢は、私がロックに惹かれる理由と同じ。
ジャズが難解だと思う人こそ、まずはマイルスから入るといい。ジャズが「止まっていない」音楽だと知れば、きっと世界が広がる。

タイトルとURLをコピーしました