10月27日はサイモン・ル・ボンの誕生日。
泣く子も(80年代当時は)黙っていたデュラン・デュランのボーカルだ。
いやあ、売れたね。当時は夢中になったよ。ポスターを貼り、PVを夜更けまでVHSで繰り返し見た人も多いだろう。

ニューロマンティックの登場
80年代初頭、パンクの熱が冷め、シンセサイザーが楽器の王様になりつつあった頃、ロンドンのナイトクラブ「ブリッツ」から生まれたのがニューロマンティック。
ヴィサージュ、スパンダー・バレエ、ウルトラヴォックス、そしてデュラン・デュラン──。
ビジュアルとファッション、映像演出を前面に出した「総合芸術」的ポップスのムーブメントだった。
ちなみにDuran Duranのデビュー曲「Planet Earth」では、歌詞の中に “New Romantic” という言葉が登場する。
彼ら自身がまさにこのムーブメントの旗印のような存在だった。
実際、MTV時代の幕開けと完璧にシンクロした彼らは、世界中のティーンを魅了し、一夜にして“MTVスター”となった。
デュラン・デュランの頂点と“もがき”
Apple Music の ESSENTIALS を聴いていると、彼らの全盛期が一瞬の閃光だったことがよくわかる。
「Girls on Film」「Hungry Like the Wolf」「Save a Prayer」──どれもバブルのように眩しく、完璧に時代と噛み合っていた。
だが、80年代後半に入ると、そのキラキラした音とファッションは急速に時代遅れの象徴になっていく。
テクノロジーの進化が速すぎたのか、あるいは、彼ら自身が“完璧すぎた”のか。
「変わろう」とするもがきは確かに聴こえる。けれども、そのたびに“80年代の亡霊”が足首をつかんでくる。
それでも心に残る理由
今聴くと、オーバープロデュース気味の音も、ドラムのリバーブも、笑ってしまうほど80年代だ。
でも不思議と、メロディだけは今でも耳に残る。
ル・ボンのボーカルは技巧的ではないのに、どこか人懐っこく、無邪気で、ちょっとナルシスト。
そのアンバランスさこそが、デュラン・デュランの個性だったのかもしれない。
結局、ニューロマンティックとは?
結局のところ、ニューロマンティックとは──
「音楽というより、“時代の気分”そのものだった」んじゃないかと思う。
華やかで、過剰で、でもどこか切ない。
まるでバブル景気の前夜みたいに、**「永遠に続くかもしれない夢」**を見せてくれた数年間。
それが、ニューロマンティックの正体だ。
おまけのオチ
当時の自分が夢中になった理由を考えると、
「音楽が好き」というよりも──
**“あの世界の匂いを嗅いでみたかった”**んだと思う。
きらびやかで、手の届かない遠い世界。
でも、そこに漂う香りには確かに引き寄せられた。
今さらシルクのシャツを着て、髪を逆立てる勇気はないけどね。
それでも、あの時代のサイモン・ル・ボンのように、
**「何かに本気で酔える瞬間」**をもう一度探してみたくなる。
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🎵 おすすめ再聴プレイリスト
• Planet Earth
• Girls on Film
• Hungry Like the Wolf
• Save a Prayer
• Ordinary World(90年代の復活作、意外と沁みる)

