
10月29日はデニー・レーンの誕生日。
残念ながら彼は2023年12月に亡くなった。79歳。
Wings では、リンダを除けば結成から解散まで唯一の“皆勤賞”メンバー。
でも騒動も脱退劇もなし。あの天然型天才ポールと10年もやってケンカひとつしないなんて、奇跡だ。
ポールを愛し、支えた男
レーンはもともと The Moody Blues の創設メンバー。
「Go Now!」で全英1位を取った実力派だ。
それがあえて華やかな道を離れ、ポールと組んだ。
まるで「ポールと一緒に音を作れるならそれでいい」というように。
のちのインタビューでも、彼はポールのことを終始“マイ・フレンド”と呼び続けている。
敬意というより“好き”に近い。そんな距離感だ。
Wingsの屋台骨
Wings のサウンドの中で、レーンは職人だった。
ギターもベースもキーボードもこなし、コーラスも完璧。
「Deliver Your Children」ではポップさを抑えて少し渋く、ブルース寄りに導いている。
そして「No Words」や「The Note You Never Wrote」には、
あの時代特有の“英国的メランコリー”が滲む。
そして彼が深く関わった「Mull of Kintyre」は、
スコットランドの風景と友情の象徴のような曲になった。
ポールが笑えば、レーンはそっとハーモニーを添えた。
そんなバランスが Wings の温度だったと思う。
偉大なるフォロワーのエピソード
ステージを離れた友情
ツアー後のホテルのロビーで、ポールが「俺はまた別のバンドを組むかも」と冗談めかして言った時、
レーンは笑いながら「じゃあ俺も行く」と返したという。おそらく本気だった。
ロックの現場の“良心”
Wings は度重なるメンバー交代に揺れたが、レーンは一度も不満を口にしなかった。
リハ中に誰かがテンションを落とすと、彼がギターで軽くブルースを弾き出して場を和ませたという。
再会を信じ続けた人
解散後もSNSで「Paul and I will always be friends.」と書き、
亡くなる前年まで Wings 時代の写真を投稿していた。
時間がたっても、彼のなかでは“バンドはまだ終わっていなかった”のだろう。
コヨーテ的おすすめ曲
1. Go Now!(Wings Live ver.)
2. No Words(Wings)
3. The Note You Never Wrote(Wings)
4. Deliver Your Children(Wings)
5. Mull of Kintyre(Wings)
友情で始まり、友情のまま終わった
音楽業界では珍しく、金銭トラブルもなく、解散後に公に批判したことも一度もない。
それどころか、ポールが苦しい時期もレーンは悪く言わず、距離を置いても誠実だった。
訃報に接して、ポールはこう書いた。
“I am very saddened by the passing of my dear friend Denny Laine.
He was a great talent and a great soul.”
最初から最後まで“音楽が結んだ友情”だった。
主役にはならなかったけれど、主役を輝かせた翼。
そして最後まで、ポール・マッカートニーという人間を好きでい続けた稀有な人。
音楽は、才能だけじゃなく、愛情でできている。
そのことを、デニー・レーンは静かに教えてくれる。
 
  
  
  
  
