音楽的天才としてのクリスティン
クリスティンの楽曲は、温かみのあるメロディーと心に響く歌詞で多くの人々を魅了しました。特に代表的な作品を振り返ってみましょう。
🎧「Don’t Stop」
– 1977年のアルバム『Rumours』収録のこの楽曲は、まさにクリスティンの真骨頂。未来への希望を歌った前向きなメッセージと、キャッチーなメロディーが絶妙に融合した名曲です。後にビル・クリントンが大統領選挙キャンペーンソングに使用したことでも有名になりました。
🎧「You Make Loving Fun」
– 同じく『Rumours』から。恋の喜びを歌った楽曲でありながら、実は彼女の不倫関係について歌ったものという複雑な背景を持ちます。しかし、そんな重い現実を感じさせない軽やかさが、彼女の作曲センスの素晴らしさを物語っています。
🎧「Hold Me」
– 1982年の『Mirage』収録。
私はRumoursは後追い体感でしたが、Mirageはリアルタイムで聴きました。
実は、Rumoursはあまりに売れすぎているイメージがあって、当時中学生の私はひねくれていたんでしょうね、大人な感じのフリートウッド・マックとは距離を置いていました。
Mirageの頃には、もう老成が進んで来始めたのかもしれません。
(60過ぎて、Rumoursの素晴らしさを再確認していますが。。)
バンド内の愛憎劇の渦中で
Fleetwood Macの歴史は、音楽的成功と同時に、メンバー間の複雑な人間関係で彩られています。クリスティンもその例外ではありませんでした。
彼女は1968年にバンドのベーシスト、ジョン・マクビーと結婚し、マクビー姓を名乗ることになります。しかし、バンドの成功とともに二人の関係は悪化。1976年に離婚することになりました。
興味深いのは、離婚後も二人が同じバンドで活動を続けたことです。『Rumours』制作期間中、スティーヴィー・ニックスとリンジー・バッキンガムも破局を迎えており、バンドは文字通り「愛憎渦巻く」状態でした。
そんな中でクリスティンは、バンドの照明技師と不倫関係にあったことを後に告白しています。「You Make Loving Fun」は、実はその関係について歌ったものでした。しかし、彼女は元夫ジョンに対して「犬について歌った」と嘘をついていたというエピソードも。
バンドの心臓部として
こうした複雑な人間関係の中で、クリスティンは常にバンドの調和を保つ役割を果たしていました。彼女の穏やかな性格と、音楽に対する真摯な姿勢が、しばしば衝突するメンバーたちを繋ぎ止めていたのです。
スティーヴィー・ニックスが「魔女的」で神秘的な存在だったとすれば、クリスティンは「母性的」で包容力のある存在でした。彼女のキーボードとヴォーカルは、バンドサウンドの土台を支え、時には激しく、時には優しく、Fleetwood Macの音楽的アイデンティティを形作っていました。
永遠の遺産
1998年にバンドを離れた後も、クリスティンの楽曲は多くの人々に愛され続けました。2014年に一時復帰を果たした際の感動は、今でも多くのファンの心に残っています。
クリスティン・マクビーは、音楽史上最も複雑で魅力的なバンドの一つであるFleetwood Macの心臓部でした。彼女の残した楽曲は、人間の感情の複雑さと音楽の力を見事に表現した、永遠の宝物です。
今日、彼女の誕生日に、私たちは改めて彼女の音楽と人生に感謝の気持ちを込めて、「Don’t Stop」を口ずさみたいと思います。