
大学時代のあの会話──
「ソウル聞かなきゃダメだよ」
「じゃあカセット作って」
「メロウ?ファンク?」
「ファンクで」
その悪友が作ってくれたテープの中で、ひときわ異彩を放っていたのがZappだった。
ファンカデリックやスライ・ストーンに混じって、突然現れる電気ショック級のファンク。トークボックスの“話してるようで話してない”あの声を初めて聞いたときの衝撃は、いまでも脳に刻まれている。
Zappの中心にいたのが、11月29日生まれのロジャー・トラウトマン。
シンガーであり、ギタリストであり、シンセマスターであり、そして誰よりも“この世にファンクを増やした人”。
今日はZappの魅力と、コヨーテ的ベスト5をまとめてみた。
■ Zappとは何者か
1970年代後半、オハイオの“オハイオ・プレイヤーズ系譜”のもう一つの太い枝として登場したのがZapp。
中心人物ロジャー・トラウトマンはとにかく多才。ギター、ベース、シンセ、鍵盤、そしてあのトークボックス。
初期はジョージ・クリントン率いるP-Funk軍団と深く関わり、そこから強烈なファンクの遺伝子を受け継ぎつつ、より電子的・機械的なファンク──いわゆる「エレクトロ・ファンク」の先駆けになっていく。
Zappはダンスフロア向けの強靭なビート、派手なシンセ、そしてロジャーのトークボックスという“一撃必殺”で、80年代のブラックミュージックシーンでも異彩を放った。
そして後年には、Dr.Dre、2Pac、BiggieらがZappサウンドを何度もサンプリングすることで、ヒップホップ界の「隠れ父」となっていく。
■ コヨーテ的・Zapp ベスト5
5位 「A Touch of Jazz」(Part I & II)」(1982 / Zapp II)
Zappの中では異色。
あの彼らが“ジャズに触れたらこうなる”という、実験性とグルーヴの見事な折衷案。
派手なトークボックスは控えめで、代わりにシンセとベースラインのうねりが気持ちよく続く。
「Zappにもこんな上品な顔あるんだな」と思わせる名曲。
4位 「More Bounce to the Ounce」
説明不要のZappのデビュー曲にして、世界を変えたベースライン。
これ一発で80年代ファンクの方向性が確定したと言っていい。
後年はサンプリングだらけで、もはや“Zapp国歌”。
ビートの太さだけで勝ち抜くタイプのモンスター曲。
3位 「I Can Make You Dance」
タイトルがすべてを物語る。
Zappは「踊れ」と命令しない。
ビートで踊らせる。
派手な装飾がありつつ、実はめちゃくちゃ計算されたミニマル構造。
いや、本当に踊っちゃう。
2位「Come On」(1982 / Zapp II)
Zappの全盛期ど真ん中、初期の勢いをそのまま加速させたファンク爆弾。
強めのスネア、太いベース、そしてロジャーのトークボックスが前に出る“これぞZapp”の音。
「More Bounce〜」直系の跳ね感があって、しかも演奏のキレはさらに鋭い。
派手さとタイトさのバランスがすばらしく、ビートが一歩もブレない。
Zappを知らない人にも「まずこれ聴け」と言える一本。
1位 「Dance Floor」(1982 / Zapp II)
Zappの最高到達点。
もう…反論は受け付けない(笑)
シンプルで太いビート、ロジャーのトークボックスのフレーズ、そして“無駄ゼロ”の音の配置。
「ダンスフロアでかかれば100%盛り上がる」という保証付きのクラシック。
大学時代、カセットで聞いたあの曲。
時代が変わっても、いつ聴いても身体が反応する。
ファンクの魔法ってこういうことだ。
■ ロジャー・トラウトマンの遺したもの
1999年の衝撃的な死でZappの歴史は止まってしまうけど、ロジャーのサウンドはその後の音楽に深く残り、特に90年代の西海岸ヒップホップを決定づけた。
トークボックスの響きは今でも新しい。
むしろ時代がロジャーに追いついていない部分すらある。
Zappの音を聴くと、身体の深いところが「動け」と言ってくる。
それは“グルーヴに正直であれ”というロジャーの遺言みたいなものかもしれない。
