
8月5日は、日本ロック界に唯一無二の足跡を刻んだミュージシャン・どんと(1962–2000)の誕生日。ボガンボスのフロントマンとして、ソロアーティストとして、魂そのものを音楽に込めた彼の存在は、今もなお多くの人の胸を熱くしています。
ローザ・ルクセンブルグと「祝祭のロック」
どんとの音楽キャリアは、1980年代のバンド「ローザ・ルクセンブルグ」に始まります。ファンク、レゲエ、ブルース、民謡、ロック…あらゆるジャンルを咀嚼したサウンドに、奇想天外な歌詞とパフォーマンスが融合したそのスタイルは、まさに“祝祭のロック”。型破りだけど、どこか懐かしく温かい——そんな音楽でした。
ボ・ガンボスの登場——魂を解き放つバンド
1990年代初頭、どんとはボ・ガンボスを結成。より自由に、よりスピリチュアルに。泥臭くも生命力にあふれたサウンドと、観客を呑み込むようなステージングで、彼らは瞬く間にライブバンドの頂点に立ちます。
中でも渋さ知らズやソウル・フラワー・ユニオンと共演した伝説の野外ライブは、今でも語り継がれる“祝祭の極致”。音楽と人が一体化したその空間に、どんとの思想が凝縮されていました。
⸻
🎧
おすすめ楽曲セレクション
ローザ・ルクセンブルグから
「在中国的少年」
• 東洋と西洋の狭間を旅するような摩訶不思議な世界観
• サイケでクールなのにどこかユーモラス
• どんとの詩人としての才覚が光る代表曲
「橋の下」
• どんとのメロディーメーカーとしての才能が開花している。詩の素晴らしさも相まって文句なしに泣ける。
ボ・ガンボスから
「魚ごっこ」
• 儚さと愛しさが交差する美しいバラード
• どんとの声の奥に、まっすぐな「生」が宿る
• ライブでは必ずと言っていいほど泣くファン続出
「夢の中」
• 彼の死後もなお、語り継がれる象徴的な一曲
• リズムと幻覚のような詩が絡み合う、独自の浮遊感
• これぞ“どんと宇宙”の入口
「トンネル抜けて」
• ボ・ガンボスらしい土臭いロックンロール
• 絶望の向こうに希望を見出す“どんと的哲学”の具現
• フロアが跳ねる、生きることの喜びが満ちた名演
どんとが遺したもの
どんとは、単なるロックシンガーではありませんでした。音楽という枠を超えた**「生き方の提示者」**だったと言えるでしょう。メジャーとインディの垣根を飛び越え、ジャンルにも時代にもとらわれず、「音楽で生きること」「音楽に生きること」を全うした人。
彼の影響は、ソウル・フラワー・ユニオンやハナレグミ、七尾旅人、UAなど多くのアーティストに受け継がれています。
終わらない旅の途中で
2000年1月、ハワイの地で38歳の生涯を終えたどんと。でも彼の音楽は、死んでなんかいない。
むしろ、生きている私たちの心の中で、今もどこかでギターを掻き鳴らしている——そんな気さえするのです。
この8月5日、彼の誕生日に。
CDでも、配信でも、YouTubeでもいい。
どんとの音楽に、ふと触れてみてください。
その声は、今もあなたのすぐそばにあるはずです。