秋田の隠れた名酒「太平山」〜小玉醸造と、天巧・艸月を味わって〜

誕生日に届いた小さな大吟醸

秋田といえば、新政や雪の茅舎といった有名銘柄を思い浮かべる人も多いかもしれません。ところが今回、私の誕生日にふらっとやって来た息子が手渡してくれたのは「太平山」。秋田県潟上市にある小玉醸造のお酒でした。

持ってきてくれたのは、純米大吟醸「天巧(てんこう)」の180mlと、純米酒「艸月(そうげつ)」の360ml。ちゃんと誕生日を覚えていて小瓶を選んでくれたこと自体が、何より嬉しい贈り物でした。

小玉醸造と「太平山」

小玉醸造の創業は明治12年(1879年)。地元の良質な米と水を活かし、「太平山」の名で知られる日本酒を醸してきました。
「太平山」は、戦前に全国新酒鑑評会で史上初の3年連続金賞を受賞したという実績を持つ、由緒あるブランド。秋田県内では昔から親しまれてきた銘柄ですが、全国的にはあまり流通量が多くなく、“知る人ぞ知る”存在かもしれません。

天巧(てんこう):華やかさの極み

まずいただいたのが純米大吟醸「天巧」。グラスに注いだ瞬間から広がるフルーティーな香りに、思わず頬がゆるみます。
飲んでみると、まろやかで芳醇。雑味は一切なく、気づけばあっという間に飲み干してしまいました。

後で調べてみると、この「天巧」、なんとANAの国際線ファーストクラスで提供された実績があるとのこと。なるほど、上質な香りと口当たりは、特別なひとときを彩るにふさわしいものでした。

艸月(そうげつ):静かな余韻

一方の「艸月」は、香りは控えめで落ち着いた印象。口に含むとスッキリとして透明感があり、飲み疲れしない味わいです。冷やしてキリッと楽しむのがぴったり。こちらは一気にではなく、少しずつ時間をかけて味わいたくなるお酒でした。

まとめ

「太平山」という銘柄は、地元秋田に根ざしながら、全国的にはあまり目立たない存在かもしれません。しかし、ファーストクラスに選ばれるほどの実力を秘めていることを知ると、その奥ゆかしさもまた魅力に思えます。

そして何より、誕生日に息子がふらっと持ってきてくれた小瓶。天巧と艸月を味わいながら、酒蔵の歴史とともに、その心遣いまでしみじみと噛みしめた夜でした。