
9月11日は、ジョニー・バックランド(Coldplay)の誕生日。今年で48歳になります。彼の名を聞いて即座に顔が浮かぶ人は多くないかもしれません。しかし、Coldplayの音楽に漂う独特の叙情性とスケール感を考えたとき、その屋台骨を支えてきたのがバックランドのギターであることは間違いありません。
結成当時の社会的背景
Coldplayが結成されたのは1996年、ロンドンのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)での学生時代のこと。90年代のイギリスはオアシスやブラーに代表されるブリットポップ全盛期。しかしその終焉も見え始め、シーンは新しい「ポスト・ブリットポップ」の担い手を探していました。
その中でColdplayは、キャッチーさや派手さよりも、内省的で叙情的なサウンドを打ち出しました。バックランドは、エッジの効いたギターでありながら、主張しすぎない音色で、クリス・マーティンの詩的な歌声を包み込むような役割を担ったのです。
バンドの主張と世界観
Coldplayの音楽は「人間愛」を掲げながらも、単なる優しさだけでは終わりません。甘美なメロディの背後には、どこか厭世的で、時に宗教的とも取れる普遍的な問いかけが潜んでいます。
バックランドのギターは、派手なソロや技巧を競うものではなく、アンビエントな質感やミニマルなリフで、この複雑な世界観を音響的に支えています。彼のスタイルは、U2のジ・エッジに通じる部分がありますが、さらに抑制的で「空気を作る」ことに徹している点が特徴です。
代表アルバム3枚で聴くバックランドの存在感
• 『Parachutes』(2000)
デビュー作。アコースティックとエレクトリックの間を縫うようなギターが特徴。代表曲「Yellow」でのシンプルかつ切実なリフは、彼の存在感を強く印象づけました。
• 『A Rush of Blood to the Head』(2002)
Coldplayが世界的バンドに躍り出た作品。「Clocks」「The Scientist」などで聴けるアルペジオは、歌を際立たせながら、楽曲全体を浮遊させるような役割を果たしています。特に「Clocks」のリフは、バンドの代名詞とも言える象徴的なサウンドです。
• 『Viva la Vida or Death and All His Friends』(2008)
ブライアン・イーノを迎えて音響面を大きく広げたアルバム。タイトル曲「Viva la Vida」では、オーケストラの波の中で、ギターは決して出しゃばらず、しかし確かにドラマを支える陰の存在感を発揮しています。
近況と現在のColdplay
Coldplayは近年も「環境問題への取り組み」や「サステナブルなツアー」を掲げ、単なるロックバンド以上の存在になっています。最新作『Music of the Spheres』(2021)でも、壮大なテーマとポップさを両立。ワールドツアーでは、太陽光発電や自転車発電を導入するなど、バンドとして社会的実践を続けています。
バックランドは表舞台で派手に語ることは少ないものの、そのギターは今なおバンドの世界観を形作る不可欠なピース。派手さを競わず、ただバンドの音を“成立させる”その姿勢こそ、彼の最大の魅力でしょう。
コヨーテの締めくくり
Coldplayは時に「ポップに寄りすぎた」と批判されることもありますが、彼らのサウンドの核にあるのはジョニー・バックランドの一貫した姿勢。主張しすぎないギターが、世界的に愛されるメロディを支え続けてきました。
ロックスター的な派手さはないけれど、静かにバンドの魂を鳴らし続けるギタリスト──それがジョニー・バックランドの真の姿です。
🎸 誕生日をきっかけに改めて聴くと、彼の「静かな存在感」に気づけるはずです。
 
  
  
  
  
