
1984年、斑尾ニューポートジャズフェスティバルに行った。スポンサーはバドワイザー。スキー場のゲレンデに寝転がり、ビール片手に音楽を聴く──青空の下、涼しい風が心地よくて、これ以上ない開放感だった。
今思えば、あの空気感こそ日本の野外フェスの原点だった。
当時はフュージョン全盛。スパイロ・ジャイラの出演に胸を躍らせ、小曽根真がゲイリー・バートンと共演して、若き才能を存分に見せつけたのも印象的だった。
でも一番記憶に残っているのはBBキング。肩の力が抜けた笑顔、ギター“ルシール”から流れ出る音。あの「When It All Comes Down」で会場が一体になり合唱した瞬間、昼間の高原の空気が震えたのを今も覚えている。
BBキングという人
9/16はBBキングの誕生日(1925-2015)
ミシシッピ州の綿農場に生まれたライリー・B・キング。少年時代はゴスペルを歌い、やがてメンフィスのラジオ局で「ブルースボーイ」と呼ばれるようになり、それが“B.B.”の由来になった。
1952年の「3 O’Clock Blues」でブレイク。電気ギターでブルースを歌うスタイルを確立し、年間200本以上のツアーを続けた“ロード・ウォリアー”。
1969年の「The Thrill Is Gone」でポップチャートにも進出し、“ブルースの王様”として世界中にファンを増やした。
おすすめアルバムと聴きどころ
まずはライブ盤『Live at the Regal』。観客との掛け合いまで音楽になっている名盤だ。
スタジオ盤なら『Completely Well』。「The Thrill Is Gone」を聴けば、彼がブルースをどこまで洗練させたかが分かる。
私にとって特別なのは『Midnight Believer』。あの日の「When It All Comes Down」がここにある。
晩年の『One Kind Favor』では、声もギターも枯れてなお艶やか。最後まで現役ブルースマンだった。
少し寄り道するなら、エリック・クラプトンとの共演盤『Riding with the King』。ブルースが世代とジャンルを越えた瞬間を感じられる。
影響を与えたアーティスト
BBキングはエリック・クラプトン、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、U2のジ・エッジなど、多くのギタリストに影響を与えた。
クラプトンは「ギターで歌うことを教えてくれたのはBBキングだ」と語り、スティーヴィー・レイはBBのビブラートを徹底的に研究したと言われる。ロックギターの多くの表現は、BBが切り開いた道の上にある。
高原で聴いたブルース
BBキングのライブは、音を詰め込まず空気を満たす。あの日、涼しい高原の昼間に寝転がって聴いたブルースは、まるで空気そのものになって私を包み込んだ。
9月16日、BBキングの誕生日。あの青空とビールの味を思い出しながら、久しぶりに『When it all comes down』を聴きたくなる。

