次はオーケストラを聴こう! ロック好きにすすめたい7曲

コンサートホールで演奏するオーケストラと指揮者

前回の記事「クラシックはじめの一歩〜まずは一曲、聴いてみませんか〜」では、まずは気軽に聴けるピアノ曲を紹介した。

「思っていたより悪くないな。」

そう思ってもらえたなら、次はオーケストラを聴いてみよう。

とはいえ、ここで急にハードルが上がる。交響曲は一時間近くあるし、オーケストラには何となく大袈裟なイメージがある。ロックばかり聴いてきた身からすると、「クラシック好きの人が聴くもの」という印象だった。

でも実際はそんなことはない。入口にぴったりの曲はいくらでもあるし、ロック好きだからこそ面白いと思える曲もある。

今回は、その中から「まずこれを聴いてほしい」というオーケストラの名曲を紹介したい。

まずは「ボレロ」

最初の一曲は、ラヴェルの「ボレロ」。

1928年に書かれた、クラシックの中では説明不要と言っていいくらい有名な曲だ。

面白いのは、最初から最後までほとんど同じメロディーが繰り返されること。小太鼓が一定のリズムを刻み、その上でフルート、クラリネット、ファゴット、サックス、ホルン、トランペット……と、次々に違う楽器が同じ旋律を受け継いでいく。

メロディーは変わらない。でも楽器が変わるだけで、景色まで変わって聴こえる。

ラヴェルは「オーケストレーションの魔術師」と呼ばれることがあるけれど、この曲を聴くと、その意味がよく分かる。

ロック好きの耳で聴くと、一本のリフを延々と積み重ねていくようにも聴こえる。同じフレーズなのに最後まで飽きない。そして最後には、オーケストラ全部が鳴り響いて一気に終わる。

「オーケストラって面白いじゃないか。」

そう思わせてくれる一曲だ。

次は「協奏曲」という世界

ボレロを楽しめたら、次は協奏曲(コンチェルト)を聴いてみたい。

協奏曲は、オーケストラの中に一人の主役がいる音楽。ピアノ協奏曲なら、オーケストラとピアノが会話をしたり、ときにはぶつかったりしながら曲が進んでいく。交響曲よりも「誰を聴けばいいか」が分かりやすいので、オーケストラ入門にはちょうどいい。

ラヴェル《ピアノ協奏曲 ト長調》

ジャズの影響を受けた作品としても知られ、冒頭から軽快で明るい。クラシックというより、パリの街を歩いているような洒落た空気が漂う。

プロコフィエフ《ピアノ協奏曲第3番》

こちらは一転して、鋭くてエネルギッシュ。ピアノもオーケストラも一歩も譲らない。現在でも国際コンクールでよく演奏される、20世紀を代表する協奏曲の一つだ。

モーツァルト《ピアノ協奏曲第23番》

モーツァルト後期の代表作で、とりわけ第2楽章の美しさは格別。派手さはないけれど、気が付くと最後まで聴いてしまう。

実を言うと、私の好みはもう少し暗い。プロコフィエフやショスタコーヴィチ、それにバルトークのような、20世紀の少し影を引きずった音楽に惹かれる。

本当ならそのあたりも勧めたいところだけれど、それはもう少し先の楽しみに取っておこう。

いよいよ交響曲へ

協奏曲まで来たら、次はいよいよ交響曲。

「交響曲」と聞くと、何だか身構えてしまうかもしれない。マーラーやブルックナーのように一時間を超える作品もあるし、「クラシック好きが難しい顔をして聴く音楽」というイメージもある。

でも、いきなりそこへ行く必要はない。まずはベートーヴェンから始めれば十分だと思う。

ベートーヴェン《交響曲第7番》

「のだめカンタービレ」で一気に有名になった曲だ。ワーグナーが「舞踏の聖化」と呼んだように、とにかくリズムが気持ちいい。第2楽章の静かな美しさも有名だけれど、全体を通して勢いがあり、ロック好きにもすんなり入ってくる。

ベートーヴェン《交響曲第9番》

年末になると必ず耳にする「歓喜の歌」のイメージが強いけれど、あの有名な合唱は最後だけ。そこへたどり着くまでのドラマが、この曲の本当の魅力なんだと思う。

ドヴォルザーク《交響曲第9番「新世界より」》

親しみやすい旋律が多く、「これ、本当にクラシック?」と思うくらい自然に耳へ入ってくる。初めて一曲通して交響曲を聴くなら、この作品もおすすめだ。

まずは「オーケストラって意外と面白いな」と感じてもらえれば十分だと思う。

オーケストラは、生で聴くともっと面白い

ここまで読んで、「一度、生で聴いてみたいな」と思った人がいたら、ぜひおすすめしたいイベントがある。

毎年ゴールデンウィークに東京国際フォーラムを中心に開催される「ラ・フォル・ジュルネ」だ。

2026年は5月3日から5日まで、「LES FLEUVES ― 大河」をテーマに開催された。有料公演は1,000円からで、ホールAのS席でも3,400円ほど。公演ごとにチケットを買えるので、午前中に一公演、昼ご飯を食べてもう一公演、気に入れば夕方にもう一本、という楽しみ方ができる。

ロックフェスを回るような感覚で、一日中クラシックを楽しめるのだ。

私も毎年のように足を運んでいるけれど、「今日はちょっと違ったな」と思えば、次のホールへ移ればいい。それくらい気楽に付き合えるのが、このイベントの魅力なんだ。

次回の開催情報は、発表され次第ラ・フォル・ジュルネ東京の公式サイトで確認してほしい。クラシックを始めるなら、ホールの定期演奏会より、まずはこちらの方が入りやすいと思う。

音は「降り注ぐ」

オーケストラを初めて生で聴いた時、一番驚いたのは演奏の上手さではなかった。

音だった。

スピーカーから聴く音は、一枚の壁のようにこちらへ届く。でも、生のオーケストラは違う。

ヴァイオリンも、木管も、ホルンも、それぞれの音が粒のまま空間を飛んでくる。そして、その音が頭の上から降り注ぐ。

「音って、こんなふうに聴こえるんだ。」

そう思ったことを、今でもよく覚えている。

クラシックは決して難しい音楽じゃない。前回は、一曲だけ聴いてみようという話を書いた。今回は、オーケストラを紹介した。

もし少しでも興味が湧いたなら、来年のゴールデンウィークはラ・フォル・ジュルネへ行ってみてほしい。

きっと、オーディオやイヤホンでは味わえない、「音を浴びる」という体験が待っている。