
5/26はスティーヴィー・ニックスの誕生日。
以前、もう一人のフリートウッド・マックの歌姫、Christine McVieを紹介した。
クリスティンが「しっかり者のお姉さん」だとすると、スティーヴィーは自由奔放な妹。
付き合うと苦労しそうだけど、なぜか妹の方に惹かれてしまう。そんなタイプだ。
もっとも実際にはスティーヴィーの方が年上だし、なかなか気の強い人でもあるのだが。
それにしても驚くのは、そのスティーヴィーが78歳になったこと。
あの掠れた声と黒いドレス。ステージを舞う姿は、今でもロック界の魔女のような存在感を放っている。
スティーヴィー・ニックスという人
スティーヴィーは1948年生まれ。
若い頃から恋人だったLindsey Buckinghamとともに活動し、1975年にフリートウッド・マックへ加入する。
するとバンドは一気に世界的成功を収める。
だが、その成功の裏側では人間関係がかなり複雑だった。
スティーヴィーとリンジーは破局。
ベースのJohn McVieとクリスティン夫妻も離婚。
ドラマーのMick Fleetwoodも夫婦問題を抱えていた。
そんな崩壊寸前の人間関係から生まれたのが名盤『Rumours』だ。
普通なら解散してもおかしくない状況なのに、それを傑作へ変えてしまうところがロックバンドの不思議なところである。
スティーヴィー自身も恋多き女性として知られている。
リンジーとの関係はもちろん、ミック・フリートウッドとの恋愛もあった。
さらに後年にはイーグルスのDon Henleyとの交際も話題になった。
ただ彼女の場合、恋愛そのものよりも、その経験を歌に変えてしまう才能の方が圧倒的だった。
だから失恋の歌ですら、どこか神秘的で美しい。
フリートウッド・マック時代のおすすめ
『Fleetwood Mac』(1975)
新生フリートウッド・マックのスタート地点。
スティーヴィー加入後最初のアルバムだ。
おすすめは「Rhiannon」。
この一曲でスティーヴィー・ニックスというキャラクターが完成している。
他にも「Landslide」は彼女を代表する名バラード。
若くして人生を見つめる視点に驚かされる。
『Rumours』(1977)
説明不要の歴史的名盤。
失恋と嫉妬と怒りが詰まっているのに、なぜか爽快に聴ける。
おすすめは「Dreams」。
全米1位になったスティーヴィー最大の代表曲だ。
そして「Gold Dust Woman」。
美しくも危うい世界観は、まさにスティーヴィーの真骨頂。
『Tusk』(1979)
『Rumours』の大成功後に作られた問題作。
商業的には賛否あったが、今聴くとかなり面白い。
おすすめは「Sara」。
幻想的でゆったりと流れる名曲で、スティーヴィーの世界観が色濃く表れている。
ソロ時代のおすすめ
『Bella Donna』(1981)
ソロデビュー作にして最高傑作候補。
フリートウッド・マックの枠を超え、一人のアーティストとして完全に花開いた作品だ。
おすすめは「Edge of Seventeen」。
ギターリフとあのハスキーな歌声。
スティーヴィーの代名詞とも言える一曲だ。
そしてデュエット曲「Leather and Lace」も素晴らしい。
『The Wild Heart』(1983)
勢いそのままに発表された傑作。
コヨーテはこれが最初の体験。
ロックと幻想性のバランスが絶妙だ。
おすすめは「Stand Back」。
シンセサイザーが印象的な80年代ポップの名曲。
プリンスの影響を受けて生まれたことでも有名だ。
『Trouble in Shangri-La』(2001)
円熟期の代表作。
若い頃の妖艶さだけではなく、人生を重ねた深みが感じられる。
おすすめはタイトル曲「Trouble in Shangri-La」と、「Planets of the Universe」。
年齢を重ねても失われない個性に驚かされる。
まとめ
スティーヴィー・ニックスの魅力を一言で表すなら、「燻煙枯声」。
煙に燻されたような、少し枯れたハスキーボイスだ。
技術的に完璧なシンガーではない。
だけど、その声が流れた瞬間に誰だかわかる。
それは何よりも強い武器だと思う。
クリスティン・マクヴィーがお気に入りの喫茶店で飲む丁寧なコーヒーだとしたら、スティーヴィー・ニックスは深夜のバーで飲む少し癖のあるウイスキー。
万人受けはしないかもしれない。
でも、一度その味を覚えてしまうと、時々無性に恋しくなる。
そんな歌い手なのである。

