David Bowieの「Outside」を再び聴く

1. 「選びきれない」と言いながら逃げていたもの


命日にベスト10なんてやってしまった。
今さらだけど、あれは軽かった。

ジギーも触れず、『Let’s Dance』から一気に『The Next Day』へ飛ぶなんて、
自分で書いていて違和感があった。

David Bowieの凄さは、ヒットの数じゃない。
変わり続けることをやめなかった、その姿勢だ。
今日は1995年発表の問題作。

2. 『Outside』とは何だったのか


1. Outside
(正式タイトルは長い。Bowieらしく、わざとだ。)

舞台は1999年の退廃世界。
アート犯罪、人格分裂、歪んだ儀式。
Bowieは一人で複数の登場人物を演じる。
暗い。
長い。
正直、売れなかった。
でも今聴くと、クオリティの高さにちょっと呆然とする。
(『Tonight』の軽さが遠い昔に感じるのも無理はない。)

3. 演奏陣が異常に強い

特にピアノという核
このアルバムの精神的支柱はピアノ。
弾いているのは
Mike Garson。
『Aladdin Sane』以来の盟友。
クラシックとフリージャズを行き来する、あの異端児だ。
「A Small Plot of Land」で聴ける、
崩れ落ちそうな和音。
濁り、擦れ、揺れる。
Garsonのピアノはメロディというより「精神状態」。
Outsideはギターのアルバムに見えて、実はピアノのアルバムでもある。

4. 楽曲深掘り

■ “The Hearts Filthy Lesson”

アルバムの入口。
重いビートがじわじわ迫る。
ギターは金属的に軋む。
Bowieの声は語りと歌のあいだを漂う。
意味ははっきりしないけれど、
「普通のロックはやらないよ」と宣言している感じがする。

■ “A Small Plot of Land”

本作の核心。
Garsonのピアノが崩壊寸前。
リズムは揺れ、
Bowieはほとんど絶叫。
きれいなメロディを拒否しているようで、
でもどこか美しい。
精神のひび割れを、そのまま音にしたような曲。

■ “Hallo Spaceboy”

攻撃的で機械的。
インダストリアルなビートが突き刺さる。
リーヴス・ガブレルスのギターは刃物みたい。
90年代のBowieがまだ尖っていた証拠。
荒さがそのまま魅力になっている。

■ “I’m Deranged”

反復するリフ。
冷たいビート。
淡々としているのに落ち着かない。
Lost Highway
で使われたことで再評価された。
夜の高速道路を延々と走っているような感覚。
出口がない感じが、妙にリアル。

■ “Strangers When We Meet”

闇の果てに置かれた一曲。
メロディは静かで、美しい。
ここでようやく呼吸が整う。
Bowieは完全な絶望で終わらせない。
必ずどこかに光を残す。
そこがただの陰鬱アートと違うところ。

5. 今聴くとわかること

当時は
「重い」「難解」「売れない」。
でも今の耳で聴くと、
・音はかなり先を行っている
・構造はやたら緻密
・演奏は異様にハイレベル
そして、
Blackstar
へと自然につながっているのがわかる。
Outsideは失敗作じゃない。
ただ、理解が追いつかなかっただけだ。
深夜、
少し強めの酒を用意して、
部屋を暗くする。
ヒット曲より、こういうアルバムのほうが、
案外Bowieの核心に近い。