NHKの夜ドラ、ドラマ10が秀逸な件──なぜ「地味なのに深い」ドラマが生まれるのか(その2)

夜ドラは派手さはないのに、気づくと心を持っていかれる作品が多い。以前にも夜ドラについて書いたが、今回の「ひらやすみ」もその系譜にしっかり乗っている。というか、この作品は名作の香りが早くも漂っている。

「ひらやすみ」が名作になりそうな予感


「ひらやすみ」は、真造圭伍のマンガが原作。
この人の作品は、とにかく“生活の揺れ”の描き方がうまい。大事件が起きるわけでもないのに、心の波がリアルで、読んだ後にじんわり残る。あの独特の呼吸を崩さずにドラマに持ち込めているのが今回の強みだ。

脚本は米内山陽子。
人物の距離感や温度を、セリフに落とすのが抜群にうまい。説明で押さず、余白で語らせるタイプ。原作の空気と相性が良すぎるくらいで、画面がスッと“生活のリズム”になる。

そこにキャスト陣がフィットしすぎている。

森七菜・岡山天音・吉岡里帆──キャスト陣の自然体が光る


「べらぼう」で恋川春町を演じた岡山天音。あのクセのある存在感は今回も健在で、画面にいるだけで空気が変わる。

そして森七菜。
映画「国宝」で、主役・喜久雄をひたむきに慕いつつ、大人になっていく女性を見事に演じていた彼女。その一皮むけた感じが、「ひらやすみ」でも滲んでいる。

今回の役は、山形から出てきた美大生・なっちゃん。
これがまた抜群なんだ。

肉が好きで、ゴキブリが出ると全力で大騒ぎ。
漫画家志望だけど、どこか自信がなくて、ダサくて、恥ずかしがり屋。
ほんとに“そこらにいる子”なのに、画面に出た瞬間、不思議と目が離せない。

普通っぽさと存在感、その同居っぷりが森七菜の武器で、今回それがいちばんきれいに出ている気がする。河合優実が大化けした時の「この子、次の段階来たな」という感じに近い。

さらに吉岡里帆。どこにでもいそうなOL役なのに、妙にリアルで、嫌味がない。視聴者との距離が自然で、ドラマに“生活の体温”を与えてくれる存在だ。

夜ドラ全体の“静かな名作”の系譜


「ひらやすみ」の魅力は、キャストと脚本、原作の空気感が綺麗に重なって、生活そのものを見ているような自然さが生まれているところ。
大事件が起きる作品じゃない。でもセリフの間や、ちょっとした動きで胸をつく瞬間がある。

これは夜ドラ全体の特徴でもある。「地味に見えて深い」ドラマを作れるのは、余白を大事にしつつ、役者の呼吸を信じているからだ。

「ひらやすみ」は、その夜ドラの美点を若いキャストがしなやかにアップデートしていく一本。名作になりそうな予感がするのは、作品の呼吸と役者の成長がピタッと噛み合っているからだ。

──肩の力を抜いて観られて、あとからじんわり効いてくる。
そんな夜ドラの醍醐味が、今回もちゃんと詰まっている。