あの頃のように愛し合ってるかい?〜5月2日は、忌野清志郎の命日。

二次会のカラオケで、昔はRCを入れればだいたい勝てた。
「雨あがりの夜空に」か「トランジスタ・ラジオ」を入れた瞬間、酔っぱらいが肩を組み始める。あの頃の清志郎は、「知ってる」じゃなくて「空気」だった。

でも最近、若い連中とカラオケへ行くと驚く。
「え、キヨシローって誰ですか?」

たまに、
「知ってます! 生き方かっこいいですよね。反原発の人!」
なんて返ってくる。

いやいや、ちょっと待て。

もちろん、原発にも戦争にも、権力にも噛みついた。
だけど、清志郎は「思想家」じゃない。
ましてや、説教くさい正義の人でもない。

ただ、自分の違和感に嘘をつけなかっただけだ。

窮屈な空気が嫌いで、
偉そうな奴が嫌いで、
愛のない言葉が嫌いだった。

だから歌った。

そして実際の清志郎は、たぶんかなり繊細だ。
強そうに見えて、意外なくらい傷つきやすい。
だからこそ、あんなふうに「大丈夫!」と叫ぶ必要があったんだと思う。

ロックンロールって、本来そういうものだろう。
正しさじゃなく、「おかしいだろ、それ」と笑い飛ばすための音楽。

今日は、そんな清志郎を思い出しながら、何枚かアルバムを聴き返したい。

① 『Rhapsody』


RCが「日本最高のライブバンド」になっていく瞬間の熱が詰まっている。

「よォーこそ」

いきなり開幕から祝祭感全開。
清志郎の声が、もう理屈じゃなく人を煽る。

「雨あがりの夜空に」

最高のロックンロールバンドの記念碑的名曲。圧倒的な勢いのなか、よく聴くと歌詞に清志郎の繊細さも見え隠れする。

② 『PLEASE』


RCの「ポップ」と「毒」が絶妙に混ざった名盤。

「トランジスタ・ラジオ」

こんなに自由で、こんなに切ない青春ソングはない。
勉強も常識も知らねえけど、音楽だけは離さない。

「Sweet Soul Music」

RCのブラックミュージック愛が爆発。
清志郎、ほんとソウル好きなんだなとわかる。

③ 『COVERS』


発売中止騒動ばかり語られるが、本質はそこじゃない。

このアルバム、単純にめちゃくちゃカッコいい。

「明日なき世界」

オリジナルはバリー・マクガイア。高石ともやの訳詞版がベースとなっている。金子マリ、ジョニー・サンダースがゲスト参加。
掛け値なしにかっこいい!

「サマータイム・ブルース」

原発問題を歌っているのに、説教臭さゼロ。
むしろ笑ってる。
そこが清志郎の強さ。

「ラヴ・ミー・テンダー」

エルヴィスの名曲を、日本語でここまで“自分の歌”にした執念。
怒ってるのにユーモアがある。

④ 『THE TIMERS』


いたずらなのか、本気なのか。
たぶん両方。

放送禁止スレスレを、ゲラゲラ笑いながら突っ走る。
日本ロック史上でもかなり異様なアルバム。

「デイ・ドリーム・ビリーバー」

原曲より日本の夕暮れが似合う不思議。
“ずっと夢を見て安心してた”の破壊力。

「タイマーズのテーマ」

バカバカしいのに鋭い。
清志郎は、照れ隠しで過激な格好をしていた気がする。

⑤ 『シングル・マン』


商業的には失敗。
でも、後から伝説になった。

若い頃の清志郎の孤独がむき出しになっている。

「スローバラード」

日本ロック史に残る名曲。
たぶん、夜中に一人で聴くための歌。

「甲州街道はもう秋なのさ」

景色が浮かぶ。
RCは東京の匂いがするバンドだった。

⑥ 『Baby A Go Go』


RC最後のアルバム。
なのに、悲壮感がない。

解散前のバンドって、だいたい力が入りすぎる。
でもこのアルバムは違う。
肩の力が抜けていて、妙に優しい。

「I LIKE YOU」

晩年のRCらしい、大人のラブソング。
若い頃みたいに“愛してるぜ!”と叫ばない。
その代わり、ちゃんと隣に座ってくれる感じがある。

「空がまた暗くなる」

RC後期を代表する名曲。
派手じゃない。叫びもしない。
でも、人生を長くやってると、こういう歌が一番沁みる。

“空がまた暗くなる”。
それだけのことを歌っているのに、
不思議なくらい優しい。

若い頃の清志郎は、世界に向かって「うるせえ!」と叫んでいた。
でも最後のRCは、
「まあ色々あるけど、なんとかやろうぜ」
と隣で煙草をふかしている感じがする。

結局、清志郎って、
ただ「ダサいもの」が嫌だった人なんだと思う。

権威ぶる大人。
空気読め圧力。
愛のない正論。

そういうものを見ると、
子供みたいに「うるせえ!」って叫んでしまう。

だから今聴いても古くならない。

むしろ今のほうが、必要なのかもしれない。