
5/12は、Steve Winwoodの誕生日
最初に聴いたのは「Roll With It」だった。
ちょうどガンズが強かった時代、それを1位から引きずり下ろした曲。
でも、あの頃のヒット曲によくあった「時代の安っぽさ」がない。
打ち込み寄りでも軽薄じゃないし、妙にギラついてもいない。
なにより、声がいい。
全編ソウルフルなんだけど重すぎず、妙に明るい。あの「抜け感」は唯一無二だと思う。
「上手いボーカル」は山ほどいるけど、「聴いてて気持ちいい声」はそんなに多くない。
そこから逆に遡って聴いた。
『Back in the High Life』
『Arc of a Diver』
で、「あ、この人ソロ以前が本体なのかも」と気づく。
Traffic、
Blind Faith、
The Spencer Davis Group。
調べれば調べるほど、「え、この人そっち側の人だったの?」となる。
クラプトンやジンジャー・ベイカーと普通に並んで語られるレベルのミュージシャンで、10代から「天才少年」扱い。
でも本人は、いわゆるスター気質ではない。
むしろ職人。
鍵盤、ギター、作曲、アレンジ、歌。
全部できる。
しかも器用貧乏じゃなく全部ハイレベル。
だから逆に、若い頃は少し“玄人受け”しすぎた気もする。
そのSteve Winwoodが、80年代ソロで変わった。
「エンターテイメント」を受け入れた。
ただ、ここが大事なんだけど、迎合ではない。
売れ線に寄ったのに野暮ったくならない。
ポップになったのに薄っぺらくならない。
これ、実はかなり難しい。
普通はどこかで「商売の匂い」が出る。
でもウィンウッドにはそれがほとんどない。
ちゃんと売れて、ちゃんと品がある。
■ 幼くして完成していた「神童」
Steve Winwoodは1948年、イギリス・バーミンガム生まれ。
子供の頃から教会音楽やジャズ、R&Bに触れ、10代前半でもうプロ活動。
15歳でThe Spencer Davis Groupに加入する。
これ、今の感覚でいうと高校生くらい。
なのに歌声がもう完成してる。
白人英国少年なのに、やってることは完全に黒人R&B。
しかもオルガンがめちゃくちゃ渋い。
「早熟」というより、最初からベテラン感がある。
『The Spencer Davis Group』
お すすめ曲は
・「Gimme Some Lovin’」
・「I’m a Man」
若いとか関係なく、もう完成されている。
「天才少年」というより、「小さいおっさん」が歌ってる感じ。
■ Traffic — “売れる”より“気持ちいい”を選んだ
その後、自分の音楽をやるために結成したのがTraffic。
ここで一気に自由になる。
サイケ、ジャズ、フォーク、ブルース。
ジャンルを混ぜながら、空気みたいに曲が流れていく。
ヒットチャートを狙う感じでは全然ない。
でも、ハマると抜け出せない。
酒飲みながら夜に聴くと危険なタイプの音楽。
『Mr. Fantasy』
おすすめ曲は
・「Dear Mr. Fantasy」
・「Heaven Is in Your Mind」
サイケの時代なのに妙に土臭い。
浮遊感があるのに、ちゃんと地面に足がついてる。
『John Barleycorn Must Die』
おすすめ曲は
・「John Barleycorn」
・「Glad」
静かに深い名盤。
派手じゃないけど、歳を取るほど沁みるタイプ。
■ Blind Faith — 贅沢すぎた寄り道
さらに1969年、
Eric Clapton、
Ginger Bakerらと
Blind Faithを結成。
今見ると「スーパーグループ」だけど、本人たちは案外そんなつもりでもなかった気がする。
結果的にアルバム1枚で終了。
でも、その“一瞬感”も含めて神話になった。
60〜70年代ロックって、こういう無茶苦茶な豪華さがある。
『Blind Faith』
おすすめ曲は
・「Can’t Find My Way Home」
・「Presence of the Lord」
ロック界の「一回だけの奇跡」。
このメンツでちゃんと繊細なのが面白い。
■ ソロで覚醒した「上質な大人の音楽」
そして80年代。
ここでウィンウッドは、「ミュージシャンズ・ミュージシャン」から、一流のポップ職人になる。
でも、芯はまったくブレない。
メロディは開かれた。
サウンドも時代に合わせた。
なのに、軽くならない。
これ、本当にすごい。
『Arc of a Diver』
おすすめ曲は
・「While You See a Chance」
・「Arc of a Diver」
宅録職人ぶりが炸裂。
一人で作ってるのに妙に温かい。
『Back in the High Life』
おすすめ曲は
・「Higher Love」
・「Back in the High Life Again」
更に洗練されて、80年代的な華やかさがある。
でも、不思議と疲れない。
『Roll With It』
おすすめ曲は
・「Roll With It」
・「Don’t You Know What the Night Can Do?」
最も開かれた作品。
気持ちよく聴けるのに、ちゃんと音楽的。
売れても品が落ちない。
この人の真骨頂だと思う。
『About Time』
おすすめ曲は
・「Different Light」
・「Why Can’t We Live Together」
2000年代のウィンウッド、
年齢を重ねても声が枯れない。
若作りじゃなく、自然に渋くなっていく理想形。
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今のSteve Winwoodは、昔ほど表には出てこない。
でも、この人はそれでいい気がする。
ロック界って、意外と「品格」を保つのが難しい。
どこかで自分の伝説に飲まれたり、逆に時代に媚びたりする。
でもウィンウッドは、最後まで自然体のまま来た。
