
二次会のカラオケで、昔はRCを入れればだいたい勝てた。
「雨あがりの夜空に」か「トランジスタ・ラジオ」を入れた瞬間、酔っぱらいが肩を組み始める。あの頃の清志郎は、「知ってる」じゃなくて「空気」だった。
でも最近、若い連中とカラオケへ行くと驚く。
「え、キヨシローって誰ですか?」
たまに、
「知ってます! 生き方かっこいいですよね。反原発の人!」
なんて返ってくる。
いやいや、ちょっと待て。
もちろん、原発にも戦争にも、権力にも噛みついた。
だけど、清志郎は「思想家」じゃない。
ましてや、説教くさい正義の人でもない。
ただ、自分の違和感に嘘をつけなかっただけだ。
窮屈な空気が嫌いで、
偉そうな奴が嫌いで、
愛のない言葉が嫌いだった。
だから歌った。
そして実際の清志郎は、たぶんかなり繊細だ。
強そうに見えて、意外なくらい傷つきやすい。
だからこそ、あんなふうに「大丈夫!」と叫ぶ必要があったんだと思う。
ロックンロールって、本来そういうものだろう。
正しさじゃなく、「おかしいだろ、それ」と笑い飛ばすための音楽。
今日は、そんな清志郎を思い出しながら、何枚かアルバムを聴き返したい。
① 『Rhapsody』
RCが「日本最高のライブバンド」になっていく瞬間の熱が詰まっている。
「よォーこそ」
いきなり開幕から祝祭感全開。
清志郎の声が、もう理屈じゃなく人を煽る。
「雨あがりの夜空に」
最高のロックンロールバンドの記念碑的名曲。圧倒的な勢いのなか、よく聴くと歌詞に清志郎の繊細さも見え隠れする。
② 『PLEASE』
RCの「ポップ」と「毒」が絶妙に混ざった名盤。
「トランジスタ・ラジオ」
こんなに自由で、こんなに切ない青春ソングはない。
勉強も常識も知らねえけど、音楽だけは離さない。
「Sweet Soul Music」
RCのブラックミュージック愛が爆発。
清志郎、ほんとソウル好きなんだなとわかる。
③ 『COVERS』
発売中止騒動ばかり語られるが、本質はそこじゃない。
このアルバム、単純にめちゃくちゃカッコいい。
「明日なき世界」
オリジナルはバリー・マクガイア。高石ともやの訳詞版がベースとなっている。金子マリ、ジョニー・サンダースがゲスト参加。
掛け値なしにかっこいい!
「サマータイム・ブルース」
原発問題を歌っているのに、説教臭さゼロ。
むしろ笑ってる。
そこが清志郎の強さ。
「ラヴ・ミー・テンダー」
エルヴィスの名曲を、日本語でここまで“自分の歌”にした執念。
怒ってるのにユーモアがある。
④ 『THE TIMERS』
いたずらなのか、本気なのか。
たぶん両方。
放送禁止スレスレを、ゲラゲラ笑いながら突っ走る。
日本ロック史上でもかなり異様なアルバム。
「デイ・ドリーム・ビリーバー」
原曲より日本の夕暮れが似合う不思議。
“ずっと夢を見て安心してた”の破壊力。
「タイマーズのテーマ」
バカバカしいのに鋭い。
清志郎は、照れ隠しで過激な格好をしていた気がする。
⑤ 『シングル・マン』
商業的には失敗。
でも、後から伝説になった。
若い頃の清志郎の孤独がむき出しになっている。
「スローバラード」
日本ロック史に残る名曲。
たぶん、夜中に一人で聴くための歌。
「甲州街道はもう秋なのさ」
景色が浮かぶ。
RCは東京の匂いがするバンドだった。
⑥ 『Baby A Go Go』
RC最後のアルバム。
なのに、悲壮感がない。
解散前のバンドって、だいたい力が入りすぎる。
でもこのアルバムは違う。
肩の力が抜けていて、妙に優しい。
「I LIKE YOU」
晩年のRCらしい、大人のラブソング。
若い頃みたいに“愛してるぜ!”と叫ばない。
その代わり、ちゃんと隣に座ってくれる感じがある。
「空がまた暗くなる」
RC後期を代表する名曲。
派手じゃない。叫びもしない。
でも、人生を長くやってると、こういう歌が一番沁みる。
“空がまた暗くなる”。
それだけのことを歌っているのに、
不思議なくらい優しい。
若い頃の清志郎は、世界に向かって「うるせえ!」と叫んでいた。
でも最後のRCは、
「まあ色々あるけど、なんとかやろうぜ」
と隣で煙草をふかしている感じがする。
結局、清志郎って、
ただ「ダサいもの」が嫌だった人なんだと思う。
権威ぶる大人。
空気読め圧力。
愛のない正論。
そういうものを見ると、
子供みたいに「うるせえ!」って叫んでしまう。
だから今聴いても古くならない。
むしろ今のほうが、必要なのかもしれない。
