忌野清志郎の歌を聴き直す|RCサクセションとタイマーズの6枚

二次会のカラオケで、昔はRCを入れればだいたい勝てた。
「雨あがりの夜空に」か「トランジスタ・ラジオ」を入れた瞬間、酔っぱらいが肩を組み始める。あの頃の清志郎は、「知ってる」じゃなくて「空気」だった。

でも最近、若い連中とカラオケへ行くと驚く。
「え、キヨシローって誰ですか?」

たまに、「知ってます! 生き方かっこいいですよね。反原発の人!」なんて返ってくる。

いやいや、ちょっと待て。まず、あの声とバンドの音を聴いてほしい。

忌野清志郎は、RCサクセションのボーカルとして、そしてタイマーズなどの活動でも、歌を届けてきた。社会への怒りもあれば、恋愛の切なさも、思わず笑ってしまうユーモアもある。

私が歌から感じるのは、強さだけではない。大きな声で人を煽る一方で、バラードでは驚くほど繊細に聴こえる。その両方が、同じ人の声の中にある。

今回はRCサクセションの5枚と、タイマーズの1枚を聴き直してみたい。思想や伝説だけでは見えなくなる、歌い手としての清志郎に近づくために。

① RCサクセション『RHAPSODY』(1980年)


1980年4月5日、久保講堂でのライブを収録したアルバム。私には、RCがロックバンドとして大きく踏み出す瞬間の熱が詰まっているように聴こえる。

「よォーこそ」

いきなり開幕から祝祭感全開。
清志郎の声が、もう理屈じゃなく人を煽る。

「雨あがりの夜空に」

最高のロックンロールバンドの記念碑的名曲。圧倒的な勢いのなか、よく聴くと歌詞に清志郎の繊細さも見え隠れする。

② RCサクセション『PLEASE』(1980年)


RCの「ポップ」と「毒」が絶妙に混ざった名盤。

「トランジスタ・ラジオ」

こんなに自由で、こんなに切ない青春ソングはない。
勉強も常識も知らねえけど、音楽だけは離さない。

「Sweet Soul Music」

RCのブラックミュージック愛が爆発。
清志郎、ほんとソウル好きなんだなとわかる。

③ RCサクセション『COVERS』(1988年)


当初の発売中止を経て、キティレコードから発売された日本語カバー集。騒動の話だけで終わらせず、まず音を聴きたい。

怒りを乗せた言葉が、バンドの演奏の中でちゃんと歌になっている。私にとって、このアルバムは単純にめちゃくちゃカッコいい。

「明日なき世界」

P・F・スローンが書き、バリー・マクガイアの歌で知られる曲を、日本語でカバー。ジョニー・サンダースらが参加している。
掛け値なしにかっこいい!

「サマータイム・ブルース」

原発問題を歌っているのに、説教臭さゼロ。
むしろ笑ってる。
そこが清志郎の強さ。

「ラヴ・ミー・テンダー」

エルヴィスの名曲を、日本語でここまで“自分の歌”にした執念。
怒ってるのにユーモアがある。

④ タイマーズ『THE TIMERS』(1989年)


いたずらなのか、本気なのか。
たぶん両方。

放送禁止スレスレを、ゲラゲラ笑いながら突っ走る。
日本ロック史上でもかなり異様なアルバム。

「デイ・ドリーム・ビリーバー」

モンキーズの歌で知られる曲が、日本語では不思議なくらい身近に聴こえる。私には、日本の夕暮れにも似合う歌だ。
タイマーズの荒っぽいイメージを知っていると、この曲の優しさにいっそう引き寄せられる。

「タイマーズのテーマ」

バカバカしいのに鋭い。
挑発的な音とユーモアが一緒に届く。怒っているのか、笑わせたいのか。その境目が曖昧なところも面白い。

⑤ RCサクセション『シングル・マン』(1976年)


初期のRCサクセションが1976年に発表したアルバム。後年の派手なステージの印象から入ると、声の近さに驚く。

私には、若い清志郎の孤独がすぐそばにあるように聴こえる。

「スローバラード」

日本ロック史に残る名曲。
たぶん、夜中に一人で聴くための歌。

「甲州街道はもう秋なのさ」

景色が浮かぶ。
RCは東京の匂いがするバンドだった。

⑥ RCサクセション『Baby a Go Go』(1990年)


無期限活動休止前、1990年に発表した事実上最後のオリジナルアルバム。

私が聴くと、最後の作品という言葉から想像するような悲壮感より、肩の力が抜けた優しさが先に届く。

「I LIKE YOU」

後期のRCらしい、大人のラブソング。
私には、愛情を声の大きさで伝える歌ではないように聴こえる。
その代わり、ちゃんと隣に座ってくれる感じがある。

「空がまた暗くなる」

RC後期を代表する名曲。
派手じゃない。叫びもしない。
でも、人生を長くやってると、こういう歌が一番沁みる。

日が暮れていく感覚が、歌の中で不思議なくらい優しく響く。

若い頃の清志郎は、世界に向かって「うるせえ!」と叫んでいた。
でも最後のRCは、
「まあ色々あるけど、なんとかやろうぜ」
と隣で煙草をふかしている感じがする。

結局、清志郎って、
ただ「ダサいもの」が嫌だった人なんだと思う。

権威ぶる大人。
空気読め圧力。
愛のない正論。

そういうものを見ると、
子供みたいに「うるせえ!」って叫んでしまう。

だから今聴いても古くならない。

むしろ今のほうが、必要なのかもしれない。

作品情報・参考リンク

発売年・収録情報は以下の公式資料で確認しました。楽曲の聴き心地や人物像についての解釈は筆者の感想です。